ガンダムシリーズ全部観るブログ

ガンダムシリーズを見たことない「ごまさば将軍」が1話ずつ観賞して感想を書きます。

【こぼれ話002】カイだからこそ見えたものとは?~機動戦士ガンダム 第7話「コアファイター脱出せよ」感想

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こぼれ話

全方位に顰蹙を買うカイ

第7話のカイはとにかく全方位に顰蹙を買う発言をし、しまいにはブライトの鉄拳制裁を食らっている。第2話でセイラに殴られてから、4話ぶり2回目である。

第7話では「カイのこうした言動があるためにかえってホワイトベース内の団結や連帯、仲間意識を強く印象付けている。」とか居場所がなくなりつつあるカイの焦りや未熟さを表現していると分析した。

これはこれで正しいと今でも考えているが、もう少し深堀りしてみたい。

 チームワークが芽生えつつあるホワイトベース

この回はブライト、セイラ、ミライなどのクルーがアムロの作戦を実行しようと団結・協力する回である。その意味で前回第6話のぎすぎすした関係から一歩前進している。

こうした中にあって、カイの発言は「チームワークを乱す」・「士気を下げる」発言として問題があることは間違いない。

協力関係ができることで見えなくなるもの

他方、こうした協力関係が芽生えつつあるチームで起こりがちなのが、決定事項に対して誰も反対の意見をいうことができなくなるという事態である。場の雰囲気を壊してしまうことを恐れて、欠点や実現可能性について指摘しにくくなってしまうのだ。

その結果、チーム全体があさっての方向に行ってしまい、うまくいかないことも世上よく見られる現象である。

ホワイトベースとて例外ではない。今回のアムロの作戦だが、その実現可能性はどれくらいあったのだろうか。

ホワイトベースにはルッグンの監視が張り付いている。孤立状態のホワイトベースから戦闘機が射出されればシャアが見逃すわけがない。追撃されれば多勢に無勢でコアファイターは危機的状況に陥る。こうしたことは当然想定しておくべきことだ。

にもかかわらずクルーは誰もそれを指摘しない。見えていない・気づいていない、あるいは、見えているし、気づいてもいるけどあえて口にしないようにしている。

カイだけに見えていたもの

ジオン軍の追撃の可能性を指摘していたのはカイだけだった。

カイ「ホワイトベースから出たら奴らの攻撃を覚悟しといた方がいいぜ」

この発言にアムロは腹を立てて行ってしまった。他のクルーもこれ以上深く考えることはなかった。

他にも避難民を降ろすか否かを議論しているブライトとリードに対し、

カイ「でもよ、食料はどうするんだい?戦闘できない人達が100人もいるんだぜ」

きわめてまっとうな指摘をしている。

カイには状況がきちんと見えている。その上で的確な指摘をしている。

カイがこうした事情を指摘できるのはカイが孤立し、集団から浮いているからなのではないか。クルーたちの団結や協力といった「暑苦しい関係」から少し離れた位置にいるからこそ見える景色があるということだろう。

指摘の仕方が未熟

とはいっても、カイのような冷笑的な発言をされたのでは現場の士気がダダ下がりだし、状況が好転するわけでもない。

カイの指摘自体はまっとうだが、問題はその指摘の仕方にある。どう伝えれば角が立たないのか、みんなが受け入れてくれるのかを考えなければならない。

カイはこれができていないのだ。だから指摘の内容は的確でも無用なあつれきを生んでしまうのである。

カイが何歳なのかはわからないが、人間関係についてはまだまだ成長途上のガキに過ぎないということだ。

今後、こうしたカイの未熟さがどのように克服されていくのか注目したい。

何のために戦うのか?アムロ「僕はもうやめますよ!」~機動戦士ガンダム 第7話「コアファイター脱出せよ」感想

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コアファイター脱出せよ

老人・女性・子供・傷病者ばかりの避難民

この回は避難民の状況から始まる。避難民は総勢100人以上。しかし、映像で確認する限り老人、女性、子供ばかりである。包帯を巻いている人やベッドで横になる人も見える。傷病者も多数存在することがうかがえる。

おそらく戦える男性はすべてホワイトベースの操縦・運用に駆り出されていて、残っているのは老人、女性、子供・傷病者ばかりなのだろう。

何気ない描写だが、ホワイトベースの人手不足・窮状を表現している。

衛星軌道に乗れないホワイトベース

マーカー「無理ですね、衛星軌道には到底乗れません」

前回第6話からジオン勢力圏内で孤立無援のホワイトベース

もう一度宇宙に出ることができれば、ルナツーへ戻り体勢を立て直すこともできる。

しかし、度重なるジオン軍の襲撃によりエンジンが故障、出力が低下し衛星軌道に乗れないことが判明した。宇宙へ避難するためにはホワイトベースを衛星軌道に乗せる必要がある。そのためには第一宇宙速度を超える速度にまで加速しなければならないが、エンジンの故障のためそれができない。

というわけで、ホワイトベースは地球上でなんとかジオン軍の襲撃をしのぎ続けるしかない。

クルーの数も圧倒的に足りておらず、そのクルーも素人ばかり、補給も受けることができない。ホワイトベースはいつ撃沈してもおかしくない危機的状況にある。

民間人を降ろす?

ブライト「そんな。我々は軍人です。民間人を守る義務があります」
リード「だからこそだよ。100人以上いる避難民をホワイトベースから降ろせばだな、我々は衛星軌道に戻って体勢を」
ブライト「ここはジオンが占領している所なんですよ。子供や老人達を」

民間人を降ろすかどうかでもめるブライトとリード。

ホワイトベースガンダム連邦軍参謀本部に送り届けるという目的を達成するには民間人は足手まといでしかない。補給も期待できないし、食糧問題も発生する可能性がある。

民間人を降ろしてしまうのも1つの作戦としてはありうる。

しかし、民間人を降ろすといってもどこに降ろすのだろうか。周囲に生活できそうな町らしきものは何もない。ガルマの基地周辺の映像を見ても壊れた建物が点々と存在するばかりで、使えそうな建物はガルマ部隊の本部建物くらいしか見当たらない。そうした荒涼とした土地に民間人を降ろして民間人たちはどうなるのか。

ホワイトベースの現状を考えると民間人を降ろすという作戦は現実的ではないかもしれない。

アムロの作戦

ブライト「ホワイトベースのエネルギーを利用してコアファイターを発進させる?」
アムロ「はい。弾道軌道に乗れば目的地には確実に着けます」
ミライ「確かに可能性は十分ね。さっき計算してみたんでしょ?」
アムロ「はい。中央カタパルトにメインエンジンのスチームバルブを繋げさえすれば、やれます」

ジオン勢力圏内で完全に孤立状態にあるホワイトベースだが、連邦軍参謀本部と連絡が取れれば援護や補給を期待でき、危機的状況を脱することができる。

アムロの作戦は、ホワイトベースのカタパルトを使ってコアファイターを弾道軌道でばひゅーんと発射し、ジオン軍の頭を飛び越えて連邦軍参謀本部へ向かおうというものである。

2日間の追撃!?

ガルマ「驚いたな。外から見たデータで割り出した性能でも、我がモビルスーツ・ザクなど問題外か。内部のデータがわかればさらに。シャア、あのモビルスーツを敵によくも2日間も追撃できたものだな」

ガルマのセリフから驚くべき事実が判明した。なんとサイド7での奇襲からここまでわずか2日間ほどの出来事だったのである。

この間の出来事を軽くまとめてみよう。

  1. サイド7内にザク2機が潜入、奇襲を仕掛ける。アムロガンダムでザク2機撃破。
  2. ホワイトベースルナツーに向けてサイド7出港。シャアとアムロ、初の直接対決。
  3. ルナツー到着直前に、補給中のムサイを急襲。
  4. ホワイトベースルナツーに到着。ブライトたちは隔離、ガンダムは封印されてしまう。
  5. シャアがルナツーを攻撃。ホワイトベースガンダムで撃破。
  6. ホワイトベースが地球に向けてルナツーを出港。
  7. 大気圏突入のタイミングでシャアがホワイトベースを襲撃。
  8. ホワイトベースガンダム地球に降下成功
  9. ガルマ部隊がホワイトベースを襲撃。
  10. ガルマ、次の作戦検討中。←今ここ。

「追撃」と言っているので、サイド7出港時から大気圏突入時までが2日間だと考えるとしてもとてつもない密度である。アムロは最前線でシャアと戦いっぱなしの2日間だったわけだ。そりゃ疲れ果てるわけだ。

合計55時間!?

連邦兵「コアファイターには何時間ぐらい乗ったのかね?」
アムロ「え、あ、シミュレーションで18時間、訓練で35時間、実戦で2時間です」
連邦兵「いまどきそんなもんで実戦か。ま、仕方ない、度胸決めてやるんだな」
アムロ「はい」

アムロコアファイターに乗った時間は「シミュレーションで18時間、訓練で35時間、実戦で2時間」の合計55時間である。

ガンダムのコックピットはコアファイターなので、ガンダムに乗っている時間もここに含まれるという理解でいいのだろうか。

それとも、戦闘機の形をしているコアファイターに乗っている時間が合計55時間で、これとは別にガンダムに乗っている時間がある、ということだろうか。

後者だとすればガルマの「2日間」というセリフとの整合性が怪しくなってくるので、おそらくは前者の理解でいいのだろう。

それにしても、アムロは睡眠と食事以外はほぼほぼガンダムコアファイターのシミュレーション・訓練を行っているのだろう。そうでなければたった数日で搭乗時間が55時間に達することはない。

アムロの過労具合が窺える。

「もう食べない方がいい」

コアファイターをカタパルトで射出する場合、パイロットには強いGがかかる。そうすると脳内の血流量が減少し、めまいが発生したり嘔吐したりすることがある。立ちくらみと同じ原理だ。

アムロがサンドイッチのようなもの食べているが、食べ過ぎるとコアファイターのコックピットがとてもとても悲惨なことになるので負傷した連邦兵「もう食べない方がいい」と促している。

そして、もっと強いGがかかった場合、視野の狭窄や喪失をきたし最後は意識喪失に至る。

人体に強い+Gがかかると、心臓より上にある脳へは充分な血液が供給されなくなりグレイアウト、ブラックアウト、などの症状が現れる。さらに強いGがかかると一過性脳虚血による意識喪失(G-LOC=失神)を起こす。戦闘機では旋回時にパイロットが力むことで血圧低下を防止しており、効果を上げるために筋力トレーニングをする。【G-LOC

今回の作戦でアムロは実際に意識喪失にまで至っているので、相当強度のGがかかったことが分かる。このあたりの描写は非常にリアルだ。

アムロの成長(その1)

ハヤト「心配じゃないのか?」
アムロ「何が?」
ハヤト「君の一番仲良しのフラウ・ボゥが人質にとられているんだぞ、少しは気になって」
アムロ「ハヤト、ブライトさんもミライさんもセイラさんもリュウさんもいるんだ。ホワイトベースのことは任せられると思ってるよ。僕は自分のできる事をやるだけだ」

フラウボウが人質になったことについて、アムロも気にはなっているようで、ハヤトの方をチラチラ見てはいる。

しかし、声をかけようとはせず連邦兵との会話を優先させている。

ハヤトから「心配じゃないのか?」と言われるが、「ブライトさん達がいる。」、「自分のできることをやるだけ」と返す。

このセリフはこれまでのアムロなら考えられないセリフだ。

前回第6話で、アムロはハヤトの「ガンタンクで注意を引いて敵の目標を分散させる」という言葉に耳を貸そうとせず、自分の作戦に拘泥していた。自分一人でなんとかしようと考えていたが最後の最後でハヤトの言葉を受け入れている。仲間を信じて協力することができなかったアムロのささやかな成長だ。

その流れで考えれば、このシーンはホワイトベースの他のクルーにフラウボウのことは任せよう、仲間を信じようと考えることができるようになってきた「成長したアムロ」を描いているといえるだろう。

辣腕のシャア

ガルマ「シャア、どう思う?衛星軌道にでも脱出するつもりかな?」
シャア「そんな速度じゃないな。あ、あるいは!ドレンを呼び出してくれ、コムサイの発射準備をさせる」
ガルマ「シャア、どういうことだ?」
シャア「木馬め、連邦軍から孤立している状態をなんとかしたがっているんだ」

・・・
ジオン兵「木馬から何か発射されました」
シャア「弾道軌道か?」
ジオン兵「は」
シャア「我が軍を飛び越えて連邦軍本部と連絡をつけるつもりだ」

・・・
ガルマ「基地上空はミノフスキー粒子のおかげでレーダーは使えないぞ、どうするシャア?」
シャア「追いかけるまで!接触できるか?」
ジオン兵「1分後に発進、2分50秒でキャッチできます」
シャア「よし」
ガルマ「シャア。フフフ、相変わらずだな。よし、ガウ攻撃空母に伝えろ、シャアを援護しろとな」

ガルマは「どう思う?」「どういうことだ?」「どうするシャア?」とシャアに聞いてばかりで状況を把握できていないし決断もできていない。

これに対し、シャアはホワイトベースのわずかな変化からその作戦行動を察知し、即座に出撃している。状況判断と分析、行動開始のスピードはさすがだ。できる男感が存分に伝わってくる描写である。

前回のガルマはガウ攻撃空母で陣頭指揮を執り、空と陸からホワイトベースを追い詰めていった。しかし、今回は完全にシャアの当て馬になってしまっている。

やはりガルマはただのおぼっちゃんか?

ブライト達と民間人の違い

ブライト「私は地球に着陸しないとは言っていない」
避難民「あとどれくらいで着陸できるのか、はっきりとこの耳で聞かせてもらいたい」
避難民「あんたらに任せきりで悪いが、戦争の間あんた達と対等に話をする為にこの子達をここに置く事に決めたんじゃ」
ブライト「私達も全力を尽くしているんです」

避難民たちは二度と戻れないと思っていた地球に帰ってきた。しかし、いつまでも戦闘が続き、着陸する様子もない。一体どういう状況なのか。先の見えない状況にストレスを感じている。

人間つらい状況にあっても、いつか終わると信じることができればそれなり我慢が利くものである。

民間人のいう「あとどれくらいで着陸できるのか、はっきりとこの耳で聞かせてもらいたい」という要求は、「この状況がいつまで続くのかわからずストレスだ」、「その苦痛を取り除いてほしい」、「明確な目標を設定してほしい」、「そうすれば我慢できる」という要求である。

他方「この状況がいつまで続くのかはっきりしてくれ」といわれてもブライト達からすれば「こっちが聞きたいわ!!」と言いたいところだろう。

シャアの策略によりジオン軍勢力圏内に降下してしまい危機的状況にある。これを打開しなければV作戦自体が失敗に終わってしまう。自分たちの命も危ないし、当然避難民も無事ではすまない。

ホワイトベースガンダム連邦軍参謀本部まで送り届けることがブライト達の任務であるが、ホワイトベースに避難民が搭乗している以上その命を守ることも当然任務に含まれている。

ブライト達は命をかけてジオン軍とたたかい、民間人を保護しようとしているのだ。

にもかかわらず「なんで戦争ばっかりしてるんだ」、「さっさと着陸しろ」などと言われた日にはぶち切れ必至である。

避難民達もそのことは頭では理解しているはずである。しかし、実際に戦闘行為に参加しているわけではない避難民たちに戦争という実感は伴っていないだろう。

民間人とブライト達のこの温度差が今回の「暴動」につながっている。

ただブライトが偉いのは決して民間人を見捨てようとはしていないところである。当初は避難民に向けていた銃も収め、説得を試みようとしている。

意識喪失から回復するも・・・

セイラ「アムロアムロ、応答して、アムロ
アムロ「ぼ、僕は」
セイラ「気がついて?アムロ
アムロ「セイラさん・・・」
セイラ「近くに敵の追撃機がいるはずよ」
アムロ「ああっ」
セイラ「落ち着いて、落ち着いて」

強烈なGのために意識を失うアムロ。その間にシャアのコムサイが接近する。ホワイトベースからの援護のミサイルも発射されるがシャアに完全に見切られてしまっている。

その後、ようやく意識喪失から回復したアムロだが、脳血流が減少し判断能力が低下しているところに銃撃を受けパニック状態となっている。このあたりの描写は非常に細かくかつリアルである。

グレイアウトは即時の失神等には繋がりにくいため、ブラックアウトほど危険性の高い状態ではないが、脳内血流の偏移はヒューマンエラーを起こしやすい状態を作り出すものであり、その意味では少なくともレッドアウトよりは危険である。【グレイアウト

操縦桿ガチャガチャで助かった

シャア「ドレン、このバルカン砲は照準が甘いぞ」

この時アムロは撃ち落されていても不思議ではなかった。パイロットはあのシャアだし、アムロはパニック状態でまともな反撃もできていないし。

パニック状態のアムロは操縦桿をガチャガチャ動かし、左右にフラフラ。

ところが、このガチャガチャが僥倖だった。コムサイの整備不良か、バルカン砲の照準が合わずコアファイターに砲撃が当たらない。

ご都合主義的にもみえなくはないが、演出は丁寧だ。

アムロの成長(その2)

ブライト「アムロ、断じて撃ち落されてはならん。いいか、相手をよく見るんだ」
アムロ「・・・よく見ろ。(そ、そうだ、相手はたかが大気圏突入カプセルだ。戦闘機じゃないんだ・・・)」

前回と異なり、今回のアムロは仲間の声に素直に耳を傾けてる。その直後、コムサイに直撃弾を命中させている。アムロの成長が垣間見れるシーンだ。

作戦失敗

しかし、依然ピンチのコアファイター。そこにドップの編隊がやってきた。コアファイターホワイトベースの間に入り込んでいるのでホワイトベースからのミサイルによる援護もできない。

ブライト「アムロホワイトベースに戻させろ。全員、対空攻撃用意」
セイラ「アムロ、引き返せて?冷静にね。地上すれすれに戻っていらっしゃい」
アムロ「しかし・・・」
セイラ「ブライトとリード艦長の命令です」

ここで、作戦の続行を諦め、コアファイターホワイトベースに戻すことに。

殴られるカイ(2回目)

カイ「へへへへ、無理すっからさ」
ブライト「きさま!!」(デュクシ
カイ「あうっ。な、なんだよ!俺が何したってんだよ?」
ブライト「きさま、今度同じような態度を取ったら宇宙だろうとなんだろうと放り出す!!」

今回はブリッジにいるカイが全方位にちょっかいを出し、とにかく顰蹙を買う回である。

セイラ(第2話)に続いてブライトにも殴られるカイ。これはブライトが正しい。こういう冷笑的な人間がいると現場の士気が著しく下がってしまう。

第6話の冒頭でもシミュレーション訓練中のハヤトをからかっていた。

カイ「おやおやハヤト君、ご精が出ますねぇ。しかしね、目の前に敵さんがいるのよ、間に合うの?」
ハヤト「茶化さないでください」(第6話)

カイのこうした言動があるためにかえってホワイトベース内の団結や連帯、仲間意識を強く印象付けている。

卵が先か鶏が先かという話になってしまいそうだが、こうしたホワイトベース内の仲間意識・協力関係ができつつあることに対してカイは不安を覚えているのかもしれない。

もともとカイはつまはじき者だ。最初の頃は寄せ集めのメンバーしかいないホワイトベースに居心地のよさを感じていたのだろうが、徐々に仲間意識が醸成されるにつれて居場所がなくなってしまうと感じている。

その焦りや反発から冷笑的な態度に出てしまうのだろう。ようはカイもまだガキで未熟ということだ。

アムロvsシャア(5戦目)

アムロ「地上に落ちるまでは1分20秒。それまでに仕留められるか。」

ホワイトベースに収容されたコアファイターはそのままガンダムに換装。シャアもザクで出撃する。1分20秒の空中戦が始まった。

ここまでガンダムはコロニー内、宇宙空間、大気圏突入時、地上と様々な場所で戦闘を行ってきた。今度は空中戦(自由落下中)である。

アムロ「ビームを使いすぎた」
セイラ「駄目よ、アムロ、退却しなさい。銃弾を一ヶ所に受ければ装甲が破壊されないとも限らないわ」
アムロ「そ、そんな」
ブライト「ミサイルで援護する、逃げ帰れ」

いつものようにビームライフルのエネルギーを早々に使い果たしてしまったアムロ。このあたりの戦い方はまだまだ未熟だ。

反撃できない状態のガンダムに対し、シャアは頭部へ銃撃を集中させる。ガンダムの装甲がいくら厚いとはいえ、このままでは破壊されてしまう。

すかさずホワイトベースの援護のミサイルを発射。これがなければシャアの攻撃で装甲を破壊されていたかもしれない。

無事ホワイトベースに着艦したガンダム。今回もジオン軍の襲撃を乗り切った。

しかし、コアファイタージオン軍の頭の上を飛び越える作戦は失敗に終わった。

何のために戦うのか

避難民「あんたさんが、いや、ここにいる皆さんも全力で戦っておる。そのつらさはわかっとるつもりじゃが、しかし、わしら年寄りの愚痴で言ってるんじゃないんだ。我ら地球の大地を」
アムロ「わかってます」
避難民「わしらをここで降ろしてくれ」
ブライト「あと一息で連邦軍の勢力圏に入るんです。それまでの我慢がなぜできないんですか?」
避難民「それまでの命の保証を誰がしてくれるんです?」
避難民「この子の命だけでも助けてください」
避難民「安全な所を見つけて我々を降ろせばすむんじゃないのかい」
アムロ「あなた方は自分のことしか考えられないんですか?」
避難民「子供に年寄りの気持ちがわかるか!?」
アムロ「誰が、自分だけの為に戦うもんか。皆さんがいると思えばこそ戦ってるんじゃないか。僕はもうやめますよ?」
ミライ「アムロ、お茶が入ったわよ。フラウボウとちびちゃん達をブリッジによこしてください」
避難民「期待しとりますよ、お嬢さん」

避難民たちは「地球の大地を踏みたい」「安全な場所で降ろしてほしい」と口々にいう。しかし、ここはジオンの勢力圏内である。ジオンの攻撃を凌ぐのに精一杯でそんなことをしている余裕はない。アムロが「自分のことしか考えられないのか」と語気を強めるのも当然だ。

アムロは何のために戦っているのか。自分の命を守るためということは当然あるだろうし、ホワイトベースを守ることも目的に入るだろう。同じように避難民たちの命を守ることも含まれる。

しかし、アムロが守ろうとしている当の本人たちは自分勝手で我がままでホワイトベース全体のことを考えている様子はない。このままこの船に乗っていれば命の保証はないとまで考えている。アムロたちを完全に信頼しているわけではない。

自分が守ろうとしている人たちは必ずしも自分を信頼し応援してくれているわけではないのだ。

だから自分はもう戦いたくない、もう戦わないと考えるのは自分本位な判断であり、この避難民たちと同じである。

軍隊には民間人を保護する義務がある。たとえそれば自分たちに対して批判を浴びせる人たちであっても同様である。現実とはかくも厳しく、非情で、甘ったれを許さないものなのだ。

しかし、アムロにはそれが理解できない。だから「僕はもうやめますよ」と口にしてしまった。これは避難民を見捨てる発言である。

前半パートのブライトが避難民に苛立ちつつも見捨てようとしなかったのとは対照的に、アムロはストレートに感情を口にしてしまった。まだまだアムロは未熟なのだ。

これ以上アムロが発言してしまうと避難民との関係が修復不可能なレベルに達してしまう。その直前にミライが絶妙なタイミングで話を遮る。やはりミライは切れる女だ。

第7話の感想

前回、ホワイトベース内はぎすぎすした雰囲気だったが、今回は一つの作戦に向けて連帯感が醸成されつつある印象を受けた。

他方、地球に降下できたにもかかわらず、なかなか大地を踏むことができない避難民たちの我慢も限界に来つつある。その避難民たちの態度にアムロも苛立ちを隠せない。

コアファイターによる頭上飛び越え作戦は、本編で説明されていた事柄をちびっ子たちが理解できたかはかなり怪しいが、それでもこの作戦ならホワイトベースは危機的状況を脱することができるかもしれないと思えるリアリティあふれる描き方であった。

人間ドラマの部分も戦闘作戦部分も濃厚で大人でも十分楽しめる回である。

【こぼれ話001】巧みな構図で位置関係を説明~機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!!」感想

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こぼれ話

機動戦士ガンダム」で、ホワイトベースはサイド7を出港した後、ルナツーに寄り、その後地球を目指す。

物語がある程度進まないと月と地球、ルナツー、サイド7の位置関係は明らかにならないように感じられるが、実は第1話の最初ですべて説明していたのだ。

以下、画像で説明を加えているが、「機動戦士ガンダム」第1話は公式のYouTubeチャンネルで見ることができるので、ぜひ映像でも確認して、構図の巧みさを存分に味わってほしい。

youtu.be

月→地球→ルナツー

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まず、画像の左の方に小さく描かれているのが月。

続いてその右手前に青い地球。

右端に少し移っているのがルナツーである。

ルナツー

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上の画像から右方向にカメラが動いていってルナツー。巨大な岩石に人工のものと思われる複数の光が見える。

ルナツー→太陽→サイド7

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さらに、カメラが右方向に動いていって太陽とコロニーが見える。このコロニーがサイド7だ。

このシーンの後、ザクのモノアイが下からぬっと現れ、サイド7へ侵入するシーンにつながっていく。

もちろんこのシーンのみで月や地球、ルナツー、サイド7の正確な位置関係が分かるわけではないが、おおよその見当をつけるには十分だ。

また、「地球とは別のコロニー内で物語は始まりますよ」ということも分かる。

こういう絵で説明する技術こそ、アニメーションや映画などの映像芸術の真骨頂であり、作品鑑賞の楽しみの一つである。

同様の「構図による説明」は「機動戦士ガンダム」第4話でも用いられている。

こちらも同じく左から右へカメラが動いて月、地球、ルナツーを順に描いているが、第4話では月、地球、ルナツーが徐々に重なっていく描写から、この3つが一直線上にあるということが巧みに表現されている。

抜群の構図である。

ぜひ、映像で確認してほしい。

ガルマはホントは実力者!?アムロ「ガンダム、僕はもう疲れたよ」~機動戦士ガンダム 第6話「ガルマ出撃す」感想

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ガルマ出撃す

前回第5話で、大気圏突入時にシャアの襲撃を受けるもなんとか逃げ切ったホワイトベース。しかし、安心したのも束の間、降下先はジオン軍の勢力圏内だった。ガルマ率いるガウ攻撃空母がホワイトベースに接近する。

ガルマ

ガルマ「よう、シャア。君らしくもないな、連邦軍の船1隻にてこずって」
シャア「言うなよガルマ。いや、地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐とお呼びすべきかな」
ガルマ「士官学校時代と同じガルマでいい」
シャア「あれが木馬だな?」
ガルマ「うん。赤い彗星と言われるほどの君が仕留められなかった船とはね」
シャア「わざわざ君が出てくることもなかったと言いたいのか?」
ガルマ「いや、友人として君を迎えに来ただけでもいい、シャア」
シャア「大気圏を突破してきた船であるということをお忘れなく」
ガルマ「ああ。その点から推測できる戦闘力を今、計算させている。君はゲリラ掃討作戦から引き続きだったんだろ、休みたまえ」
シャア「お言葉に甘えよう。しかし、ジオン十字勲章ものであることは保証するよ」
ガルマ「ありがとう、これで私を一人前にさせてくれて。姉に対しても私の男を上げさせようという心遣いだろ?」
シャア「フフッ、はははは、ははは!」
ガルマ「笑うなよ、兵が見ている」

ガルマはザビ家の末弟で階級は大佐、ジオン軍の地球方面軍司令官である。ガルマの立場をたとえるなら、同族会社の社長の息子が若くして重役に就任しているといったところか。

ガルマはコンプレックスの塊だ。ガルマ自身も自分が実力で今の地位に上り詰めたとは考えておらず半人前だと認識している。だからこそ、ホワイトベースを沈め手柄を立てることで一人前になりたいと躍起になっている。

そんなガルマにとって、実力で手柄を立てて少佐にまで上り詰めたシャアと比較されることはコンプレックスを刺激されるつらいことだろう。

そのシャアとガルマは士官学校時代の同期で、会話から察するにかなり親密な関係にあるようだ。

この2人の関係は少々不思議だ。

先ほど述べたように、ガルマにしてみればシャアと一緒にいるとコンプレックスを刺激されるはずで、あまり一緒にいたい相手ではないはずだ。

しかし、同期が「手柄を立てる=一人前になれる」絶好の機会を運んできてくれたという以上に、ガルマはシャアに親近感を感じているように見える。

他方、シャアは腹に何かを隠している。それはのちほど判明する。

リードとブライト

リード「ガンダムを出動させれば事はすむんだよ。このジオン軍の壁を突破するにはそれしかない」
ブライト「アムロには休息が必要です」
リード「しかし、今までの敵と違って戦力をそろえてきているんだぞ」
ブライト「敵の出方を待つしかありません」
リード「私が指揮するんだ。コアファイターが1機、ガンダムが1機、これで中央突破する」

前回第5話からホワイトベースに搭乗しているリード。現時点ではリードがホワイトベースの指揮官のようだ。階級や地位はリードが上なのだろう。


しかし、ブライトは第4話でパオロからホワイトベースを託された身だ。シャアを幾度となく撃退してきた実績とプライドがある。


ブライトとリードとはとにかく馬が合わない。ブリッジでまるで子供のような言い争いをする。

リード「ええい、やめないか、騒がしい!」
キッカ「うわわああぁぁぁ!」

リードはブリッジで騒ぐ子供たちを怒鳴りつけ、キッカが泣き出してしまう。

リードもルナツーから出撃して大気圏突入時にシャアの襲撃を受け、今またガルマの攻撃を受けている。気の休まる暇がなく気持ちに余裕がない。それを子供たちを怒鳴りつける描写で表している。

指揮官のいないホワイトベース

アムロ「ブライトさん、行きます」
ブライト「アムロ
アムロ「事情はセイラさんから聞きました」
ミライ「大丈夫なの?」
フラウ「無理をすれば敵に隙を突かれるだけよ」
カツ、レツ、キッカ「自信あんの?アムロ
アムロ「自信の問題じゃない。やるしかないんでしょ?ブライトさん」
ブライト「ああ」
リード「ライト、ガンダムを行かせろ」
ブライト「ガンダムは空中戦用の兵器ではないことをお忘れなく。ましてアムロです」
ハヤト「あの、接近戦にはならないはずです。ガンタンクで狙撃するっての、どうでしょう、アムロの負担も少なくなるし」
アムロ「ハヤト」
ブライト「了解だ。ガンダムからガンタンクへ換装を急げ。コアファイター2機は迎撃要員として残せ。よろしいですね?」
リード「突破できるんだな?」
ブライト「わかるものか」

ブライトはガンダムを出撃させることに反対である。パイロットであるアムロが過労気味だし、空中戦用の兵器でないガンダムでガルマ率いるドップの編隊を撃退できるかも不明だ。

このブライトの意見も十分理解できる。しかし、ブライトに何か別に構想があるのかというと「敵の出方を待つしかありません」と作戦らしい作戦は持ち合わせていない。

結局ハヤトの提案でガンタンクで出撃することになった。

しかし、ガンタンクは2人乗りである。ハヤトとアムロガンタンクを動かすことになったわけだが、これがあとあと効いてくる。

ホワイトベースには確固たる指揮官がいない状況だ。

形式的にはリードが指揮官だが、ブライトは素直にその指示に従わない。それは、これまでホワイトベースを運用しジオン軍を撃退してきたという自負があるからである。

しかし、そのブライトも、ガンダムやそのパイロットであるアムロとの関係もあってうまく運用できているとも言い難い。

素人集団だから仕方ないとも考えられるが、それ以上にブリッジの人間関係の悪化の方が深刻化しつつある。

トゲのあるミライ

ミライ「ブライト、敵が攻撃を控えているのはなぜかしら?」
ブライト「このホワイトベースを無傷で手に入れるつもりなのだろうな。高度を下げろ、ミライ」
ミライ「了解」

このミライの「了解」の言い方に少々トゲを感じたのは自分だけか?

普段のミライならもう少し丸みのある声だと思うのだが・・・。

食い違うアムロとハヤト

ハヤト「アムロホワイトベースから出たらなるべく離れてくれ。敵の隊列を混乱させよう」
アムロ「賛成できないな、そうだろう、敵の狙いはホワイトベースだ、離れたら援護ができなくなる」
ハヤト「違うんだアムロガンタンクなら敵の注意を十分に引けるから敵の戦力を分散させるために」
アムロ「ハヤトは敵を一機でも多く撃ち落せばいいんだ」

さっそく意見が食い違うパイロット2人。人間関係の軋轢を丁寧に描いている。

なお、このあたりからホワイトベース内の人間関係全体からアムロの心情に描写の中心が移っていく。

ホワイトベースの想定とガルマ地上部隊

ガルマ「山を盾にしようとてそうはさせぬ。地上部隊を前進させろ。敵艦を捕捉、占拠するぞ」

ホワイトベース側は空中戦を想定していた。そのため、高度を下げ山を盾にして敵の攻撃を防ぎつつガンタンクを出撃して地上からドップを狙撃する作戦をだった。

しかし、ガルマは地上部隊を展開。ホワイトベースを空と地上双方から攻撃し、捕捉・占拠してしまおうという作戦だ。

この時点でホワイトベース側はまだ地上部隊の存在に気づいていない。

右?左?

アムロ「ハヤト、どっちだ?」
ハヤト「右後方旋回」
ハヤトは左方を見ながら「右後方旋回」とアムロに指示する。

ハヤトに「右後方旋回」といわれたアムロガンタンクを左に旋回させる。

このシーンのセリフと作画の食い違いは単なるミスであろう。

リードvsブライト

ブライト「前部主砲、マゼラアタックを集中攻撃」
リード「きさま、後退せんのか」
ブライト「ホワイトベースに関しては初めて扱われるあなたよりは私達の方が慣れています」
リード「きさま、軍紀違反で」
ブライト「敵の包囲網を突破してご覧に入れればよろしいのでしょう?」

前方から地上部隊マゼラアタックが接近、リードは後退・転進を命令する。

しかし、ブライトは「ホワイトベースに関しては初めて扱われるあなたよりは私達の方が慣れています」、「敵の包囲網を突破してご覧に入れればよろしいのでしょう?」と言い切り、ホワイトベース主砲での攻撃を指示する。

ここまで言うからには作戦成功は絶対条件である。ブライトも自分の首をかけた発言だ。はたしてブライトにどんな作戦があるのか。

「一人の方が戦いやすい」

ハヤト「アムロ、敵は僕達がホワイトベースの前にいる以上、規則的な攻撃を強めてくるばかりだ」
アムロホワイトベースを離れるわけにはいかない、このまま突っ込んで脱出路を作るんだ。」
ブライト「アムロ、ブライトだ、君に頼みたい。マゼラアタックに対してガンタンクは小回りが利かない。ガンダムで、ガンダムでやってくれるか?」
アムロ「ブライトさん」
ブライト「頼む。ガンタンクの方はリュウに操作させる」
アムロ「ブライトさん」
ハヤト「アムロ、ブライトさんの言う通りだ、マゼラアタックは」
アムロ「(一人の方が戦いやすいか。)了解です。ガンタンクはカイかセイラさんに操縦させてください。セイラさんならできるはずです」

相変わらず合わないハヤトとアムロ。そこにブライトからガンダムに乗ってほしいとの通信が入る。アムロも「一人の方が戦いやすい」と思ってこの命令を受け入れる。

表面上は、ブライトの指示に従ってガンダム出動の流れだが、実際にはハヤトとの共同作業から逃げるようにガンダムに乗り込むアムロ

クルー同士もバラバラの状態だ。

ひと休み

フラウボウ「飲んでって、栄養剤よ。こんなことしかできないけど」
アムロ「ありがとう」
フラウボウ「頑張ってね」

オーバーワークのアムロを気遣うフラウボウ。ホワイトベース内のぎすぎすしたやりとりが続く中、こういう描写が一服の清涼剤になっている。

重苦しいシーンの連続で視聴者も食傷気味になっているところに、ホッと一息付けるシーンだ。

イライラもピークに

セイラ「リュウ自信がなければいいのよ」
リュウ「やむを得んでしょう。発進します」
アムロ「僕だって自信があってやるわけじゃないのに」
セイラ「アムロ何か言って?」
アムロ「いや、アムロガンダム発進します」
セイラ「急がないで、ガンタンク発進までスタンバイです」
アムロ「もう、これだ、すべてこれだ」

愚痴をこぼすアムロ。セイラとリュウの何でもない会話がいちいち気になってしまっている。イライラがピークに達しているようだ。

シャアの本音

シャア「ガルマが苦戦して当然さ。我々が2度ならず機密取りに失敗した理由を彼が証明してくれている。しかも我々以上の戦力でな。ドズル将軍も決して私の力不足ではなかったことを認識することになる」
シャア「(彼がガンダムと戦って死ぬもよし、危うい所を私が出て救うもよしと思っていたが)」

ガルマとの旧交を温めていると思ったら、本心はこれである。

シャアはホワイトベースを撃退することができなかった。しかし、それは自分たちの実力不足が原因ではない。ガルマが自分たち以上の戦力でホワイトベースを攻撃しているが苦戦している。そのことがなによりの証拠だ。上司であるドズルもそのことを理解してくれるだろう。

これを部下であるドレンにはっきりと言ってしまうところにシャアの冷徹さ、無慈悲さが見て取れる。

もう1つ、シャアはガルマが死ぬこともなんとも思っていない、むしろそうなった方が自分の評価が上がるとでも考えているようだ。士官学校の同期であろうが友人であろうが気にしない。むしろ、ガルマというザビ家の人間をとことん利用してやろうという感じだ。シャアの狡猾さを表している。

この部分はドレンにも秘密にしているシャアの本音である。

重力下の初出撃

アムロ「行きます。うっ、お、落ちる」

地球の重力下での初のガンダム出撃。今回は、ホワイトベース内やアムロの心情、ガルマとシャアの関係など、盛りだくさんの内容にもかかわらず、重力の影響を丁寧に描いている。細かい部分だがこうした描写が物語のリアリティを醸し出している。

アムロリュウさん、うしろ、うしろ!」

これは「8時だョ!全員集合」へのオマージュである(異論は認めない)。

一時危機的な状況に陥りつつも、鬼気迫る形相でザクとドップ、マゼラアタックを破壊していくアムロ

今回連邦軍が勝てたのはアムロの働きによるものだろうか、それともガンダムの性能か、はたまたガンタンクコアファイターホワイトベースとの連携がうまくいったからか。そのあたりはよくわからない。

あえてはっきり描いていないのではないかとさえ感じる。

今回の戦闘シーンはもっぱらアムロの視点から描かれており、戦況全体が把握できるようにはなっていない。アムロに焦点を絞ることでその心情の推移を綿密に描こうとしているのだろう。

ブライトにかかる重責

ミライ「ブライト」
ブライト「うん、山沿いに大陸に入るしかないな」
ミライ「そうね。ガルマ・ザビに占領されたといっても、まだ大陸には連邦軍の地下組織が抵抗を続けているはずよ」
ブライト「どうやって接触するかだが」
ミライ「ブライト、今はみんながあなたをあてにしているのよ」
ブライト「わかっているミライ。さあ、ガンダムの戦士を迎えよう」

ブリッジではブライトとミライが今後のホワイトベースの進路を相談中である。ここにリードが入っていないところがホワイトベースの指揮系統の不明瞭さを物語っている。

他方、ブライトにも重責がのしかかっている。ミライの言う通り、今ホワイトベース内の空気を作っているのはブライトだ。

クルーも、リードのようなぽっと出の指揮官よりも、これまでともに戦局を乗り切ってきたブライトの方を信頼している。

ブライトにもその自覚があるからこそつらい部分もある。

暖かい出迎えを無視するアムロ

フラウボウ「アムロ、お疲れさま。アムロ

フラウボウにすら何も言葉を返さないアムロ。体力的に疲れ切っているという以上に人間関係に疲れたという印象だ。

第2話、第3話では、意気揚々とブリッジに戻ったらブライトからお小言が返ってくるだけだった。

今回はそれとは真逆で、ブライトも「ガンダムの戦士を迎えよう」と言っているし、リュウ、カイ、ハヤト、セイラが出迎えてくれている。実際にアムロを労う言葉もかけてくれている。

しかしそれらをすべて無視して自室に戻ってしまうアムロ

キッカ「アムロ、キッカ達お祝いのパイ大急ぎで作ったのよ」
レツ「シャンペンも持ってきたからさ、アムロ
カツ「パイで乾杯しようよ」
ハロ「アムロ、カンペー、アムロ、カンペー」
アムロ「一人にしてくれよ、な」
キッカ「なによアムロ、いーだ」

前半リードがキッカ達を怒鳴りつけたのと対をなすシーンである。

リードのように怒鳴りつけてこそいないが、アムロもそっけない態度をとって部屋に籠ってしまう。アムロの精神的な疲弊、余裕のなさを表現している。

シャアの企み

ガルマ「シャア」
シャア「ガルマか」
ガルマ「なぜあの機密のすごさを教えてくれなかったのだ?」
シャア「言ったさ、ジオン十字勲章ものだとな。次のチャンスを狙っているんだろ?」
ガルマ「ああ、抜かりはない」
シャア「俺も協力する。君の手助けができるのはうれしいものだ」
ガルマ「助かる、君の力を得れば百人力だ。これでキシリア姉さんにも実力を示すことができる」
シャア「キシリア殿は君の直接の上司だったな?」
ガルマ「シャア」
シャア「なんだ?」
ガルマ「私はよい友を持った」
シャア「水臭いな、今更。はははは!」

やはりガルマはシャアとの友情に何の疑問も感じていない。

他方、シャアはガルマのことなどなんとも思っていないようだ。むしろ、ガルマをどう利用してやろうかとさえ考えている節がある。

このシーンのラスト、片目がきらりと光り、ニヤリとするシャア。ガルマに口では協力するといいながら、腹では何か別のことを企んでいる。

第6話の感想

ガルマの攻撃を何とか凌いだホワイトベース。しかし、ジオンの勢力圏内にあることは変わらない。ガルマも二の矢三の矢を用意している口ぶりである。

他方、アムロは連戦につぐ連戦の疲労もあるだろうが、ホワイトベース内の人間関係に疲れた様子で、全てをシャットアウト。

リードとブライトとの軋轢も解消されないホワイトベース

果たして、ガルマの追撃を振り切ることはできるのか?

今回は戦闘よりも人間ドラマに重点を置いた回だった。ホワイトベース内のぎすぎすした人間関係とアムロの疲弊していく様を丁寧に描いていた。

ガルマの人物像の考察

ここでガルマのキャラについて考えてみたい。今回、シャアとの会話からガルマのキャラについても分かったことが沢山ある。

コンプレックスの塊であること、手柄を立てて一人前になりたいと考えていること、シャアとの関係に何の疑問も持っていないことなどである。

ガルマの立ち位置について「同族会社の社長の息子が若くして重役に就任している」と表現した。

こうした場合、一般的には他の社員から「あいつはザビ家のおぼっちゃんだから大佐なだけで、何も手柄を立てていないじゃないか」とか「何の実力もないくせに出世しやがって」的な目で見られがちである。現実の社会でもそういう人間はいるだろうし、映画やアニメ、小説などでもよく描かれるパターンである。

ガルマをそういうおぼっちゃんキャラで描こうとするのであれば、そうしたシーンが必ず入るはずであるが、「機動戦士ガンダム」のアニメを見る限りそういう描写はない。

だとすると、実はガルマはいわゆる「おぼっちゃんキャラ」ではなく、部下からの信頼も勝ち得ているそれなりに実力の伴う人物なのではないか。

実際、ドップでホワイトベースを空から攻撃し、ホワイトベースが山を盾に防御態勢に入ったらすかさず地上部隊を展開している。的確にホワイトベースを追い詰めている。

また、ガンダムを見て「この大戦の戦略を塗り替える戦力だ」と即座に見抜いている。

前回第5話の感想で、「ガルマは小物」と述べたが、その認識を変更する必要があるかもしれない。

いずれにせよ、ガルマそして何か企んでいるシャアから目が離せない展開である。

富野由悠季のミス!?ガンダムは大気圏を突破できるか!?~機動戦士ガンダム 第5話「大気圏突入」感想

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大気圏突入

アムロの母は地球に

この回は避難民とのやり取りのシーンから始まる。引き続き避難民がホワイトベースに搭乗していること、これから地球に向かうことが自然に示される。

老人「どうも。両親がいなくなってからというもの、こんな物と一日中遊んどるんです」
アムロ「戦死なさったんですか?」
老人「一週間戦争の時にね。あんたは?」
アムロ「母は地球にいるはずです。父はサイド7で行方不明になりました」

避難民との何気ない会話から、アムロの母親が地球にいることが示される。今後の展開の伏線となりそうなセリフだ。

連邦政府の移住政策の闇

老人「地球へ着いたらあの子をわしの故郷へ連れて行こうと思っとるんだ。もう二度と地球の土は踏めんと思っとりましたからなあ。サイド7に来る前には南米でコーヒー園をやっとってな。知っとるか、これがコーヒーの豆じゃ。今度地球へ帰ったらわしは絶対に動かんよ。ジオンの奴らが攻めてきたって、地球連邦の偉いさんが強制退去を命令したって、わしは地球で骨を埋めるんだ」

老人の発言から、一度宇宙へ移住してしまえば地球への帰還は困難となってしまうこと、地球連邦は宇宙への移住を行う際に強制退去という強硬手段も採っていたこと、が分かる。

第3話の感想で、「半ば強制的に宇宙へ移住させられた人もいるのではないか。」と述べたが、この老人もそうだったのかもしれない。

南米でコーヒー園を営んでいたというこの老人、手にするコーヒー豆は地球での思い出の品だろう。宇宙への移住を強制され、生業を奪われた悔しさ、無念さを忘れないために常に持ち歩いているのかもしれない。

もう二度と地球には帰れないと思っていたところに今回の動乱。この老人にとっては思いがけず地球へ帰還するきっかけとなってしまった。皮肉なものである。

連邦政府のこうした宇宙移住政策に対しては不満を持つものも多数いるはずだ。いま避難民たちは連邦軍に保護されているわけだが、連邦政府にかならずしも好意的というわけでもないだろう。

今後、避難民達と連邦軍との間で何かトラブルでも発生しなければよいが・・・。まぁ、多分起きるんだろうなぁ。

切れるミライ

ミライ「大気圏突入25分前」
ブライト「ミライ、自信はあるか?」
ミライ「スペースグライダーで一度だけ大気圏に突入したことはあるわ。けどあの時は地上通信網がきちんとしていたし、船の形も違うけど」
ブライト「基本航法は同じだ。サラミスの指示に従えばいい」
ミライ「私が心配なのは、シャアがおとなしく引き下がったとは思えないことなの」
ブライト「ミライ、君は大気圏突入することだけを考えていてくれ」
ミライ「ええ、了解」

民間人であるミライが大気圏突入の経験があるというのはかなりすごいことなのではないか。未来ではスペースグライダーのライセンスは自動車の免許のようなもので、未成年の操縦する機体での大気圏突入も頻繁に行われているのかもしれない。

ここでミライがシャアの襲撃を心配する描写があるが、やはりミライは切れる。

リード中尉

リード「若造、聞こえるか?」
ブライト「は、はい、リード中尉」
リード「大気圏突入準備はいいな。我々はサラミスの大気圏突入カプセルで行く。そちらとはスピードが違う、遅れるなよ」
ブライト「はい、了解しました。ミライ、大気圏突入の自動操縦に切り替え、以下、突入の準備に備えるんだ」
ミライ「了解」
ブライト「シャアのムサイは?」
オスカ「変わりません。ただ、ムサイに接近する船があります」
ブライト「なに、また補給を受けるつもりなのか、シャアは。待てよ、ここで補給を受けるということは、俺達の追跡をあきらめたということなのか」

前回第4話のラスト、ホワイトベースに並走する戦艦があったが、サラミスというらしい。リード中尉という士官も搭乗している。

本回の後半で明らかになるが、リードの役割はホワイトベースガンダムを無事に連邦軍本部に送り届けることである。

ブライトを「若造」と呼んでいることから、リードの人柄もルナツー司令ワッケインとさほど変わるものではなかろう。ただし、ワッケインよりも小物感がはるかに強い。

シャアの演説

シャア「あらたに3機のザクが間に合ったのは幸いである。20分後には大気圏に突入する。このタイミングで戦闘を仕掛けたという事実は古今例がない。地球の引力に引かれ、大気圏に突入すればザクとて一瞬のうちに燃え尽きてしまうだろう。しかし、敵が大気圏突入のために全神経を集中している今こそザクで攻撃するチャンスだ。第1目標、木馬。第2目標、敵のモビルスーツ。戦闘時間は2分とないはずだが、諸君らであればこの作戦を成し遂げられるだろう。期待する」

このシャアの演説は実にかっこいい。シャアの目的をとてもわかりやすく説明してくれている。

人類史上初めてとなる大気圏突入時の急襲作戦だ。一歩間違えば自分も燃え尽きてしまう。

そんな死と隣り合わせの作戦で出撃する兵士を奮い立たせるための演説だ。

本当は内心恐れを抱いている兵士もいるだろうが、シャア自身もリスクを冒して陣頭指揮を執るのだから行かざるを得ない。上官が優秀すぎるプレイングマネージャーだと部下がとても大変というかわいそうなパターンである。

連邦軍は、大気圏突入のタイミングでジオンが攻撃を仕掛けるとは考えていない。それだけ危険で無謀な作戦ということだ。それを逆手にとって攻撃を仕掛けるところにシャアの策士としての非凡さが窺える。

なお、3機ものザクが補給されたということは、シャアはタイミング的にルナツーに潜入する前くらいにドズルに補給を依頼していたのだろう。さすが、常に二手三手先を読んでいる男だ。

楽観的な連邦兵

リード「地球降下要員は大気圏カプセルに乗り移れ。サラミス本艦はカプセル放出後、ただちにルナツーに帰還せよ。カミラ、ムサイを振り切る自信はあるか?」
カミラ「自信はありません。しかし、考えようによってはうまくいくでしょう。データからするとムサイはソドンと接触しています。補給を受けたか、緊急の何かがあったんでしょう。我々を追ってくるとは思えません」

ジオンの補給艦はソドンというらしい。ガデムのパプア補給艦とは別タイプの艦だ。

ここで、カミラはムサイは補給か緊急事態で追撃はないだろうと予想する。

リード「ミサイルはスタンバっておけ」
連邦兵「了解」
リード「シャアは追ってくるかな?」
連邦兵「まさか」

ことごとく予想の外れる連邦軍。大丈夫か。

こうした演出でシャアが切れ者であることがより強調される。

「スタンバっておけよ」

リードの発言で「スタンバっておけよ」というセリフがある。この頃から「スタンバっておく」という表現が用いられていたのかとちょっとした感動を覚えた。

ところで、こちらのサイトでは「スタンバって」という言葉の初出はブライトと書いてある。

「おやっ?」と思ってブライトのセリフを確認したが、第1話からここまでブライトは「スタンバっておけ」というセリフは発していない。「機動戦士ガンダム」の中で初めて「スタンバっておけ」と発したのはリードである。

なお、ウィキペディア情報では、この言葉はすでに1974年の「刑事コロンボ」ですでに使われていたようである。なかなか歴史のある言葉だ。

シャア襲来!

ミライ「大気圏突入25分前」
シャア「20分後には大気圏に突入する。」
ブライト「ホワイトベース各員へ。本艦は8分後に大気圏に突入します。」

細かく時間を刻んで大気圏突入のタイミングが刻々と迫っていることを示す演出だ。徐々に緊迫感を高めている。

ブライトのアナウンスが終わるや否やシャアの襲来である。即座にガンダムが出撃。今回はガンダム1機でザク4機とやりあわなければならない。戦力的にはかなり不利だ。

しかし、ホワイトベースサラミスの大気圏突入カプセルが無事地球に降下できればとりあえずはOKだ。なんとか追い払うことができればよいのであって、シャアを殲滅することまでは必要ではない。

戦闘シーン

今回は戦闘シーンが長く続く。前回第4話は、ルナツー内の人間ドラマが中心で戦闘シーンは少なかったことの反動だろう。

現在、先頭を航行するのがリードの乗った大気圏突入カプセル、続いてホワイトベース

ここに後方からシャアのザク4機が襲来。さらにその後方にはムサイも控えている。

この後、連邦軍ジオン軍の戦艦やモビルスーツが入り乱れる展開になる。また、地球の大気圏が迫ってきている描写もある。説明しなければならないことが多い。

この回では今どういう状況なのかを説明するため、戦艦やモビルスーツの位置関係が分かるカットが丁寧に挿入されている。今どういう戦況なのかが分かるようになっている。

アムロvsシャア(4戦目)

シャア「敵もモビルスーツを発進させたようだ。ドレン援護しろ。我々は二手に分かれて攻撃を開始する」

シャアは二手に分かれ、シャアとザク1機でガンダムに対峙、ザク2機でホワイトベースサラミスのカプセルを襲撃する作戦だ。

まずは、ガンダム対シャアの赤ザク。

ガンダムがバズーカを発射するも赤ザクには一発も命中しない。逆に爆風に紛れて発射された赤ザクのバズーカがガンダムの盾にクリーンヒット。盾が一部破損する。

盾の断面図

バズーカの弾が盾に着弾する際一瞬断面図のカットになる。こういった表現はいまでこそ沢山目にする機会があるが、当時はどうだったのだろうか。そもそもいつごろからこうしたカットが用いられるようになったのだろうか。こういった表現の系譜を辿っていくことも作品鑑賞の一つの楽しみである。

忙しいアムロ

セイラ「アムロ、シャアに気を取られすぎないで。ザクがサラミスのカプセルを」

ここでアムロはシャアに背を向けサラミスのカプセルへ向かう。

途中、コムのザクにバズーカを発射し盾を撃破。

その後、ホワイトベースを襲撃するザクにバズーカを放つが命中せず。

とにかく今回のアムロは忙しい。

アムロ「し、しまった、バズーカのスペア弾が。セイラさん、ビームライフルをくれませんか?」
セイラ「無理よ、ライフルを発射することはできないわ、メカニックマンに聞いてみるけど」

ここでガンダムのバズーカは弾切れ。ビームライフルをセイラに求めるが射出できないと言われる。

武器もなく宇宙空間にたたずむガンダムホワイトベースはザクに取り付かれた状態。連邦軍かなり旗色が悪い。

情けないジオン兵

ガンダムに対し正面から強襲をかけるジェイキューのザク。しかしガンダム頭部のバルカンでハチの巣にされあえなく撃沈。

ジェイキュー「あんな所にバルカン砲が、ああっ、嫌だ、嫌だ、シャア少佐、シャア少佐、助けてください、シャア少佐、少佐ー」

妙に情けない最期を見せるジオン兵。ジオン軍も戦争の長期化で戦力を消耗しているため戦闘に慣れていない兵を出さざるを得なくなってきているのか。ジオンの行く末を案じさせる描写だ。

新兵器・ガンダムハンマー!

セイラ「アムロ、今はガンダムハンマーしか撃ち出せないわ」
アムロ「それでいいです」

ここまでビームライフルビームサーベルといった未来科学の粋を集めた超兵器を駆使して戦ってきたガンダムだが、ここで新兵器の登場だ!

その名はガンダムハンマー!

「とげとげのついた鉄球」というとってもステキな形状の武器だ。

思わずアムロも「それでいいです」と言ってしまうほどである。

ただ、このガンダムハンマ―でシャアのバズーカを回避する描写は実にかっこいい。アムロの戦闘技術が確実に上がってることを思わせる。

重力の影響か?

アムロ「当たらない。バルカンの重心がずれてるのか?」

逃げるザクを追い回しながらバルカンを撃ちまくるガンダム。しかし、全く命中する気配がない。訝しがるアムロ

おそらくは地球の重力の影響と考えられる。これまでアムロは宇宙空間で戦ってきており、重力の影響を考慮にいれていない。ガンダムの教育型コンピューターにも重力の影響はまだ学習されていないのだろう。

サラミスのカプセルに着弾!

サラミスのカプセルに着弾。損傷し、大気圏突入が不可能になってしまった。

マーカー「サラミスのカプセルに弾が当たりました!」
ブライト「あのまま大気圏突入ができるのか?」
マーカー「わかりません!」
リード「ブライト君、このままだとカプセルが中から燃えてしまう」
ブライト「了解しました、ホワイトベースに収容します」
リード「頼む」
ブライト「セイラ、アムロに2機のザクを引き離すように伝えろ」
セイラ「無理です。アムロはシャアと戦うので精一杯なのよ」
ミライ「10パーセント加速。サラミスカプセルの前に出ます」
ブライト「オムル、サラミスのカプセルを収容する、準備急げ。カイ、リュウ、対空援護しろ」

先ほどは「若造」と呼んでいたブライトのことをこの時は「ブライト君」と呼ぶリード。非常にわかりやすい態度である。

第4話の感想でも書いたが、連邦兵は上の者に対しては敬意を表すが、下の者に対しては尊大な態度をとる。ここでもその描写は健在である。

リードはカプセルが着弾した際の焦りっぷりといい、部下へ当たり散らすところといい、無能な上司を絵に描いたような存在だ。

アムロへザク2機を引き離すよう無茶ぶりするブライト。セイラに無理だと即答されてしまう。

すかさずミライがサラミスのカプセルの前にホワイトベースを移動させることで収容を図る。

セイラ、ミライの方が状況が見えている。

赤い彗星シャアのモビルスーツ講座

シャア「クラウン何をやってる。敵の銃撃の来るとこはわかったはずだ、接近して叩け。それではザクの性能は発揮できん!」
クラウン「は、しかし、銃撃が激しくて」
シャア「これで激しいものか。よく相手を見て下から攻めてみろ。コム、私についてこれるか?」
コム「は!少佐、大丈夫であります。ザクの右手が使えないだけです。ヒートホークは左手で使います」
シャア「上等だ、よく切り抜けてくれた。私と敵のモビルスーツにあたる」

ホワイトベースの機銃攻撃をよけるだけのクラウンをシャアが叱責する。

ザクの持ち味は接近戦である。大きな戦艦と対峙する場合、戦艦と距離を取ってしまうとただの的になってしまうが、戦艦に取り付いてしまえば相手は攻撃ができなくなる。あとは手持ちの武器で戦艦を撃破すればいい。

クラウンに丁寧にモビルスーツの使い方をレクチャーするシャア。

以上、シャア少佐のモビルスーツ講座でした。

シャアに褒められたアムロ!?

シャア「ええい、腕が上がってきたようだな、このパイロットは。」

これは素直に受け取っていいのだろうか。アムロの腕も上がっているのだろうが、それよりもガンダムの教育型コンピューターの経験値が上がっているとみる方が自然かもしれない。

ここでコムのザクをガンダムハンマーで見事撃破。残りはクラウンとシャアだけだ。

時間切れ・・・だが・・・

セイラ「アムロホワイトベースに戻って。オーバータイムよ」
アムロ「了解、セイラさん。しかし・・・シャア、これが最後だ!」
シャア「クラウン、ドレンのカプセルに戻れ。クラウン!クラウン、聞こえないのか!?」
ブライト「大気圏突入、シャッター上げろ。ガンダム収容は後部ハッチから行う。各砲座収容。アムロホワイトベース後方のハッチから入れ、もう危険だ」
アムロ「了解。でもバルカンの弾丸が残ってる。あいつをやってやる」

ここで時間切れ。アムロホワイトベースに戻るよう指示を出す。しかし、アムロがこの指示を無視してザクを襲撃する。

この戦闘は、大気圏に突入しようとしているホワイトベースに対し、それを邪魔してやろうというシャアが仕掛けた攻撃である。

ホワイトベースの勝利条件はシャアを撃退し、無事大気圏を突破することである。敵の殲滅は目的から外れる。

その意味でアムロの行動は上官の命令に反するだけでなく、ガンダムの機体と自分を無駄に危険にさらすものだ。アムロは今回の作戦行動の目的が理解できていない可能性がある。

オスカ「アムロに伝えてください、これではガンダムも大気の摩擦熱で燃えてしまいます」

「大気の摩擦熱で燃える」と言っているがこれは誤りである。

JAXAの解説が非常に分かりやすいので紹介する。

「地球帰還(きかん)時に超高速で大気圏に突入する宇宙船は、すごい勢いで前方の空気を押しつぶします。その押しつぶされた空気中の分子同士が、激しくぶつかり合って熱が発生します。つまり宇宙船と空気との摩擦(まさつ)による発熱ではありません。」

大気圏に突入する機体が高温になるのは、前方の空気を強く圧縮することによって発生する「断熱圧縮」が原因である。

「大気との摩擦」という説明は我々一般人にとってはイメージしやすいものであるけれども明確に間違いである。

富野由悠季のような天才でもこのようなミスをするのか。

こちらのサイトではさらに詳しく「断熱圧縮」について解説されている。

リード「ブライト君、私の使命はこのホワイトベースガンダムを無事に連邦軍本部に送り届けることなんだ!ガンダムを収容しろ!」
ブライト「アムロに言ってください」
リード「素人が使うからこんなことに!」
ブライト「しかし、ガンダムを出さなければホワイトベースを撃ち落されていました」
ミライ「リード中尉、椅子にお座りください、危険です。外壁冷却機能プラス3に上昇」
リード「軍法会議ものだぞ、いいな?」

ブライトも命令に従わないアムロにイライラしているのだろう、「アムロに言ってください」とつい言ってしまう。

しかし、上官であるブライトにも全く責任がないということにはならない。

この発言も含めて今回のブライトは精彩を欠く。

情けないジオン兵(その2)

クラウン「しょ、少佐、シャア!助けてください!げ、減速できません。シャア少佐!助けてください」

ここでも情けない最期を見せるジオン兵。先ほどのジェイキューも最後に泣き言を言っていた。ジオン兵の質の劣化を物語る描写である。

だとすれば前半のシャアの演説の見方も変わってくる。

ここまではっきり説明して鼓舞してやらなければならないというお守りのような意味合いにも聞こえてくる。

燃え尽きるザク

大気圏で燃え尽きるザク。

このザクが燃え尽きる様をはっきりと描くことで、同じ状況のガンダムはどうなってしまうのかというハラハラ・ドキドキ感が生まれている。

マニュアルは大事

アムロ「あった、大気圏突破の方法が。間に合うのか?姿勢制御、冷却シフト、全回路接続。耐熱フィルム」

機内でマニュアルをめくるアムロ、大気圏突破の方法を見つける。

大気圏突入の真っただ中という危急時に、初めて読んだ素人の民間人でも即座に理解し実行できるようなマニュアルを書いた人が今回の最大の功労者である。

ペラペラの耐熱フィルムでガンダムを覆うアムロ

アムロ「もつのか?これで」

もっともな疑問である。

ガンダムの性能を誰も知らない?

シャア「モビルスーツの位置は変わらんな。燃え尽きもしない」
ドレン「どういうことでしょう。あのまま大気圏に突入できる性能を持ってるんでしょうか」
シャア「まさかとは思うが、あの木馬も船ごと大気圏突入をしているとなればありうるな。残念ながら」

ジオンもさることながら、連邦軍の誰もガンダムが大気圏突破の性能を持っていると知らなかったようだ。しかしここは少々不自然に感じた。

大気圏に突入することになるのであれば事前にマニュアルを熟読しておくはずである。特にパイロットであるアムロは当然読んでおくべきである。

大気圏突入時に攻撃を仕掛けてくるはずがないと連邦軍は想定しており、ガンダムの性能の事前調査を怠っていたと考えれば一応話はつながるが、それでも不自然さは否めない。

シャアの狙い

シャア「無線が回復したら大陸のガルマ大佐を呼び出せ」
ドレン「ようやくわかりましたよ、シャア少佐。よしんば大気圏突入前に敵を撃ち漏らしても、敵の進入角度を変えさせて我が軍の制圧下の大陸に木馬を引き寄せる、2段構えの作戦ですな」
シャア「戦いは非情さ。そのくらいのことは考えてある」

シャアの作戦をドレンが説明してくれている。ガンダムホワイトベースを撃ち漏らしても、ジオン軍の勢力圏内に降下させることができればジオン軍の攻撃のチャンスは続く。

さすが、常に二手三手先を考える男である。

なお、ここから地球上にもジオン軍が制圧している領域があることが分かる。地球から最も遠いサイド3から進撃して、地球上にも勢力圏をもつに至っているジオン軍。これまでの快進撃ぶりを物語っている。

シャアとガルマ

ガルマ「よう、なんだい、赤い彗星
シャア「その呼び名は返上しなくちゃならんようだよ、ガルマ・ザビ大佐」
ガルマ「ははは、珍しく弱気じゃないか」
シャア「敵の”V作戦”って聞いたことがあるか。その正体を突きとめたんだがね」
ガルマ「なんだと」
シャア「そのおかげで私はザクを8機も撃破されてしまったよ」
ガルマ「ひどいものだな、そんなにすごいのか?」
シャア「そちらにおびきこみはした。君の手柄にするんだな。のちほどそっちへ行く」
ガルマ「よし、そのご厚意は頂こう。」

シャアとガルマはお友達のようだ。階級はガルマが大佐でシャアが少佐。通常であればシャアが敬語を使うべき関係だ。

しかし、お互いにため口である。ガルマもそのことを気にも留めない。なんせ最初の呼びかけが「よう、なんだい、赤い彗星」である。シャアも会話の最後でガルマのことを「君」と呼んでいる。

この2人は階級を越えたかなり親しい間柄のようだ。年齢もそんなに変わらないと思われる。

ガルマはずーっと毛先をくるくるしている。髪に触る癖は不安感やストレスからくる場合があるが、ガルマの癖もおそらくこれであろう。

大佐という重任にありながら毛先をくるくるする様からして、ガルマはたぶん小物である。

ブライトの表情の変化

無事大気圏を突破したガンダム。ジオンのザクが燃え尽きてしまったのとは対照的に無傷である。ガンダムの性能の高さが窺える。

ブライト「ヤツめ、あとで締め上げなければならんが、このモビルスーツがあれば連邦軍はジオンに勝てる」

このセリフを言うときのブライトの表情の変化が素晴らしい。目元の描写がわずかに変わるだけだが、それだけでブライトの感じた手ごたえ、自信、希望を表現している。こういうところにプロの技が光っている。

シャアに嵌められたホワイトベース

マーカー「予定進入角です。現在までのコースです」
リード「これではなんにもならんじゃないか!!ブライト君!」
ブライト「そう思います。ここはジオンの勢力圏内です」
リード「冗談じゃない。うっ」
セイラ「傷の手当てを」
ブライト「シャアは戦術にすぐれた男です。我々はシャアにはめられたんです」
リード「突破するんだ、なにがなんでも!」
マーカー「敵機です!」
リード「なに」

大気圏突入時にシャアに襲撃され、窮地を乗り越えたと思ったらガンダムが収容できず、そのまま大気圏を突破。ガンダムは何とか無事だったものの、ジオン軍の勢力圏内に降下してしまう、そのことが判明したまさにその時に敵機の接近を知る。

文字通り、ホワイトベースには息つく暇もない。

第5話の感想

いよいよ地球に到着したホワイトベース。しかし、シャアの術中にはまりジオン軍勢力圏内に降下してしまった。そこにガルマザビ率いるガウの艦隊が接近する。

これまではシャア率いる一小隊が相手だったが、今度はガルマの大艦隊である。

はたしてホワイトベースの運命は!?

今回のお話は戦闘がメインだった。人間ドラマ、セリフで見せるというよりは映像で状況を説明するところが多かった。

シャアの采配が冴えわたる回だ。シャアの策略にホワイトベースははまり大ピンチに陥っている。次回以降の地球上での展開が気になるところである。

民間人とアムロとの会話からこの物語の背景もより詳細に明らかになってきた。連邦政府の強硬的な移住政策とジオン軍の蜂起は無関係ではない。

こうした背景事情が重奏低音として横たわっていることに着目すれば、より深く「機動戦士ガンダム」を味わうことができるだろう。

パオロはなぜ死んだのか?少年達に託されたホワイトベース~機動戦士ガンダム 第4話「ルナツー脱出作戦」感想

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ルナツー脱出作戦

ルナツーの位置

冒頭のシーン、月と地球とルナツーが順番に描かれ、ルナツーが地球を挟んでちょうど月の反対側に位置することが分かる。わずか10秒程度だが実に巧みな構図だ。図やナレーションで説明してもいいところだが、視覚的な説明にこだわったところにプロの技を感じた。

ちなみにルナツーが存在するのはラグランジュ点と呼ばれる地点で「天体と天体の重力で釣り合いが取れる『宇宙の中で安定するポイント』である。」

レクリエーションサービス?兵員接待?

連邦兵「レクリエーションサービスどこに行っている?兵員接待の準備できているのか?」

マダガスカルという名の軍艦が入港中である。その際、連邦兵の「レクリエーションサービス」「兵員接待」というセリフがでてくる。

文字通り受け取れば、ルナツーへ入港する軍艦のクルーたちへの「おもてなし」ということだろう。ジオンとの戦争中、しかも連邦軍の最前線基地であるにもかかわらずこうした「おもてなし」をしなければならないところが連邦軍の腐敗、堕落を物語っている。

ただし、こうした「おもてなし」を受けることができるのは正規の軍艦だけであり、そうではないホワイトベースの扱いはだいぶ違う。

ルナツーに無事到着したが...

ブライト「我々は民間人を100人以上連れているんですよ。それだってサイド7が攻撃されてやむなく脱出してきたんです。味方の基地に着いたというのに休むこともできないなんて、そんなことありますか?」
ワッケイン「君の質問には私が答えよう。ルナツー方面軍司令ワッケインだ。君がブライト・ノア君だな」
ブライト「は、はい。避難民達はとても疲れています。基地で落ち着ける場所をさがしていただきたい」
ミライ「ジオン軍の追跡を受けて休まる間もなかったんです」
ワッケイン「民間人を収容しておく余地はないな」
ブライト「そんな」
ワッケイン「皆さん方はこのままここにいていただきます。地球連邦軍本部の指示を仰いで、しかるべき艦でただちに地球へ移動してもらうことになります」

ルナツーに無事到着したホワイトベースだが、100人以上いる避難民たちは休む間もなく地球へ移動となるようだ。

ルナツー連邦軍の最前線の軍事基地なので、もともと民間人を多数逗留させることは想定されてないだろうし、そんな余裕も連邦軍にはないはずだ。どうにかこの避難民達にはよそへ行ってもらいたいというのが本音だろう。

連邦軍の一方的な決定に驚きや不満を漏らす避難民たち。

戦争によって民間人は翻弄され住む場所も追われてしまう。それは科学技術が進歩・発展した未来においても同様だという普遍的事実を描いている。

この場面に限らず、この回ではワッケインのいや~な感じが強調されている。いかにも軍人といった立ち振る舞いで融通が利かない印象だ。「地球連邦軍本部の指示を仰いで」という点も官僚主義的である。

ちなみにワッケインがもっているのはたぶんこれ。ラグランジュ点に小惑星を設置できるくらい技術の進歩した宇宙世紀にあっても大活躍なようだ。

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隔離されるブライトたち

ワッケイン「次の者は一般避難民とは隔離する。ブライト・ノアミライ・ヤシマリュウ・ホセイセイラ・マスカイ・シデンハヤト・コバヤシアムロ・レイ
ブライト「わけを、わけを聞かせてください!」
ワッケイン「士官候補生と民間人がみだりに軍のトリプルAの秘密、すなわちホワイトベースガンダムを使用したことによる。全員軍事裁判にかけられるものと覚悟しておくことだ。ホワイトベースは没収、ガンダムは封印して軍の管轄下に戻す。以上だ」

ワッケインは必要最小限の説明しかしない。「以上だ」とさっさと話を切り上げる。「お前たちと話をするつもりはない」といった態度がありありだ。しかも語彙がそこそこ難しい。当時テレビ放送を見ていたちびっ子たちは理解できただろうか。

なお、ここまでブライトは正規の軍人と思っていたが、どうやら士官候補生のようだ。

アムロ「身勝手じゃありませんか。サイド7がどういう状態だったか調べもしないで、よくもそんなことが言えますね?」
ワッケイン「・・・」

「身勝手だ」と抗議するアムロだがワッケインは何も言わない。アムロを一瞥して去っていく。全く相手にしていない。

軍人の民間人に対する身分意識・差別意識

ワッケイン「艦長、ルナツー司令ワッケインです」
パオロ「ホ、ホワイトベースの修理と、こ、子供達を...」
ワッケイン「あとは私にお任せください。お心置きなく傷のお手当てを」

ワッケインは正規の軍人には敬礼をする。パオロが担架で運ばれてきたシーンでもパオロに対しては敬礼をしている。しかしブライトたちにはしない。

また、言葉遣いも、パオロに対してのみ「あとは私に任せください。心置きなく傷の手当てを」と過剰なまでの敬語を使用している。対してブライトたちには尊大な態度だ。

ワッケインにとってブライトたちや民間人らは敬意を表すべき相手ではないということだ。

こうしたちょっとした仕草や言葉遣いでワッケインやその部下たちの身分意識・差別意識が描かれる。

なお、パオロもここまで窮地を何度も潜り抜けてきたブライトたちを「子供たち」と表現している。ワッケインほどではないかもしれないが、パオロとて同様の身分意識・差別意識から完全に自由ではない。

汚い大人と純真な子供たち

ワッケインは上の者には敬意を表すが下の者には態度を変えるという「汚い大人」そのもの。他方、ブライトやミライ、アムロが訴える内容は純真で正論だ。

こうした「純真無垢な少年たちの前に立ちはだかる汚い大人」という構図は少年少女の成長物語の典型であり、機動戦士ガンダムでもアムロ達の成長を描いていきますよというメッセージである。ちびっ子たちがアムロたちに感情移入しやすくするための装置にもなっている。

堕落した連邦兵

連邦兵「ガンダムの封印が終わったらガンタンクだ」
連邦兵「ガンタンクはどうする?こいつはバラバラだぜ」
連邦兵「封印しとけ。ワッケインはあれでうるさいんだから」

第3話でパプワ補給艦を沈める大活躍を見せたガンタンクがバラバラとはということだろうか。特に破損するような描写もなかったはずだが。

上司の顔色をうかがいながらお仕事をする連邦兵。官僚主義的で、ミスをしないこと、上司に怒られないことを優先する姿勢は連邦兵の堕落ぶりを表している。軍隊としての統制はとれているとしても、末端の兵隊の士気はかなり低い。

ここまでジオンに負け続けの連邦軍だが、その要因はこうしたところにもあるのではないかと思わせるシーンである。

馬鹿にされるブライト

ブライト「ムサイが来ます。あのまま赤い彗星のシャアが追撃をあきらめたとは思えません。今ガンダムを封印することは」
ワッケイン「君に戦略をうんぬんする資格はない」
ブライト「あなたは赤い彗星の恐ろしさを知らないんです」
ワッケイン「正規の軍人でない君の判断ならそうも思えるだろうな。だがな、赤い彗星といえば名だたる戦士だ。彼がムサイごとき軽巡洋艦でこのルナツーに挑むような馬鹿なマネはしない」

完全にブライトを馬鹿にするワッケイン。「軽巡洋艦でこのルナツーを襲撃する奴はいない!( ー`дー´)キリッ」と言い終わった次のシーンで否定されるのだから少しかわいそうではある。第3話ではブライトがミライやセイラから集中攻撃をうけていたが、第4話ではワッケインにお鉢が回ってきている。

ミノフスキー粒子の性能判明

シャア「敵を目の前にしても捕捉されぬとは奇妙なものだな。科学戦もつまるところまで来てしまえば大昔の有視界戦闘に逆戻りというわけだ」

このシャアのセリフでようやくミノフスキー粒子の性能が判明した。この粒子が充満する空間ではレーダー探査ができなくなる、そのため索敵は目視によらなければならない。「有視界戦闘に逆戻り」とはこういうことだろう。

また、レーダーが使えないということは濃霧の中で戦闘を行うようなもの。大型の戦艦よりもモビルスーツのような小型の兵器でひそかに接近、奇襲を仕掛けるのが最適解というわけだ。

ジオン軍がここまで戦争を有利に進めていたのはモビルスーツを先に開発していた点が大きい。

逆に考えれば、連邦軍モビルスーツを開発したことはこのジオン軍の優位性を覆すものであり、ドズル、シャアがガンダムにこだわる理由もここにある。

アルテイシア回想

シャア「(もしやあの時の少女が10年前に別れた妹の、いや、アルテイシアにしては強すぎる。そう、アルテイシアはもっと優しい)」

シャアとセイラが離れ離れになったのが10年前。戦争が始まったのが9か月前だから、戦争が2人を分かったわけではないようだ。

第3話、セイラとブライトの会話のシーンで、セイラはサイド7に来る前は地球にいたという。アルテイシアがいるであろう地球を眺めつつシャアが回想する。

相変わらずシャアは優しい優しいアルテイシアに浸っている。セイラに銃口を向けられたのが余程ショックだったのだろう。

セイラがアルテイシアであった場合、ルナツーに攻撃を仕掛ければアルテイシアを危険にさらすことになる。それだけは避けたいシャア。

「あんな強い女がアルテイシアなわけがない。アルテイシアはもっと優しいんだ!」と自分を納得させ、ルナツーへの攻撃を決断する。

シャアはアルテイシアを危険にさらす作戦行動には出られない。これはシャアの弱点といってよいだろう。

ルナツー潜入!

ノーマルスーツでルナツーに潜入するシャア。確認する範囲でジオン兵はシャア含めて12~15人のようである。

ワッケインは「軽巡洋艦でこのルナツーを・・・( ー`дー´)キリッ」といっていたが、シャアの戦術の方が一枚上手だった。

ガンダムの性能の説明

アムロ「だからブロック接続レバーが2段になってる点を忘れなければいいのさ。この操作がジオンのザクと決定的に違うってことなんだ」
カイ「ほんじゃあさ、ガンダムが最高にジオンのザクより優れてるってのはなんなんだよ?」
アムロ「戦闘力さ。今までのザクタイプのモビルスーツと違って、戦いのケーススタディが記憶される」
カイ「ケーススタディが記憶される?ってことはガンダムって戦闘すればするほど戦い方を覚えて強くなるって理屈か?」
アムロ「そうさ。しかも操縦の未熟な僕でさえ歴戦の勇士のシャアとどうにか戦えたのは僕の上手下手よりガンダムの教育型コンピューターの性能がいいってことだよ」

・・・
アムロ「コンピューター管理で操縦ができる。教育型タイプコンピューター。すごい、親父が熱中するわけだ」(第1話)


第1話で連邦の極秘資料を読み耽っているときのアムロの独り言をカイとの会話形式で詳述してくれた。第1話~第3話ではあり得なかった説明ゼリフだ。

先のシャアのミノフスキー粒子の説明にしろ、このアムロの説明にしろ、この回は登場人物がセリフで詳しく説明してくれるわかりやすい回である。

シャア襲来

そんなのんきなお話をしているときについにシャアが襲ってきた。ルナツーの電源部分がやられ遠心重力装置がストップ。無重力状態となる。

遠心重力装置はぐるぐる回転して疑似的な重力を作り出す装置だ。それがいきなり止まったのでアムロたちは慣性によって吹っ飛ばされてしまった。

ここでリュウの顔のすぐそばにフォークが突き刺さるシーンがある。いかにもアニメ的なコミカルな描写だが、無重力状態をきちんと表現しているという意味で細かな演出である。

なお、遠心重力装置についてはこちらのJAXAの説明が非常に分かりやすかったので紹介する。

iss.jaxa.jp

思考停止の連邦兵

電力の供給がなくなった程度で効かなくなる電子ロック制御の扉を開けブライトたちが脱出。セイラ、ミライとともにホワイトベースへ向かう。

ホワイトベースではフラウボウが連邦兵と口論している。

フラウボウ「ジオンの攻撃が始まったというのに、なぜわたし達を安全な所に避難させてくださらないんですか?」
連邦兵「司令からはなんの命令も出てないから」
フラウボウ「じゃあ、わたし達にここで死ねって言うんですか?」
連邦兵「い、いや、そう言ってるわけじゃないんだ」
フラウボウ「だったら早いとこ司令と連絡を取ってなんとかしてください」
連邦兵「し、しかし、司令は今それどころじゃないだろうし」

フラウボウの抗議はもっともである。民間人を安全な場所に避難させることも軍隊の役割の一つだ。

しかし、連邦兵は上官の命令がないからといって動かない。フラウボウが「ならさっさと司令と連絡を取れ」というと「司令も今はそれどころじゃないだろうし・・・」と歯切れが悪い。

この回をとおして連邦兵は官僚主義的で上官の命令にのみ従い、命令がなければ動かない。完全な思考停止状態にある。だからこそ少年少女のまっすぐさ、純真さが映えるのだ。

ここでブライトとアムロのコンビネーションツインキックが連邦兵にクリーンヒット。ホワイトベースガンダムでシャアを迎え撃つ準備に入る。

マゼランが港の出入口をふさぐ!

シャアの仕掛けた機雷によって出港途中のマゼランが港の出入口をふさいでしまった。小型艇で撤退するワッケインたち。

ワッケイン「きさまらそこで何をしとるか!ホワイトベース立ち入り禁止は厳命したはずだ」
アムロ「シャアと戦えるのはガンダムしかないんです!」
ワッケイン「すぐに退去したまえ!」
ブライト「反逆罪は覚悟の上です。ワッケイン司令。あなたの敵はジオン軍なんですか?それとも私達なんですか?」
ワッケイン「きさま。今、君に軍紀がなぜ必要なのか説明したくはないが、定められた命令は厳守だ」
ミライ「軍紀軍紀、それがなんだって言うんですか。軍人が軍紀に則って死ぬのは勝手です。でも、ほかの民間人がその巻き添えになるのは理不尽ではないでしょうか、ワッケイン司令」

ワッケインはあくまでも軍人であり、軍紀を重視する姿勢を崩さない。軍人としての訓練を受けた者としては当然だろう。

そんなワッケインに少年少女はキラッキラした素朴で純真な正論を浴びせかける。背筋がむず痒くなるほどの正論である。

しかし、その言葉はワッケインには届かない。もともとワッケインはブライトたちのことなど眼中にないのだから「生意気にも小賢しいことを言いおって」という程度しか考えてないだろう。

ブライトたちに託されたホワイトベース

パオロ「どうだろう、ワッケイン君、ホワイトベースにしろ、ガンダムガンキャノンガンタンクは今まで機密事項だった」
ワッケイン「はい」
パオロ「だからなのだ。不幸にして我々より彼らの方がうまく使ってくれるのだ。すでに2度の実戦の経験がある彼らに」
ワッケイン「しかし、艦長」
パオロ「そう、しかし彼らはしょせん素人だ。司令たる君が戦いやすいように助けてやってくれたまえ。わしが責任を持つ」
ワッケイン「・・・わかりました、艦長のお言葉に従います」

結局ワッケインを説得できたのはパオロの「わしが責任をもつ」という「大人の言葉」である。

ワッケインも「艦長のお言葉に従います」と答える。ワッケインは少年少女の主張に従ったのではなく、パオロの「わしが責任をもつ」という言葉に従ったのだ。

この場で展開されるのは徹頭徹尾大人の世界の論理だ。大人を動かすには「大人の言葉」が必要なのである。

ともあれ、この瞬間ホワイトベースはブライトたちに託された。

ここまでサイド7でのザクの奇襲から始まってシャアの度重なる襲撃など、ブライトたちは状況に翻弄されっぱなしであった。ホワイトベースガンダムを運用しているのもただのなりゆきに過ぎず、そこに何らの正統性の根拠も見いだせない。強いて指摘するとすれば手負いのパオロを擁していることくらいしかない。

そうした状況でなんとかルナツーに到着し、そこでホワイトベースは取り上げられてしまう。当然の流れだ。ブライトたちにはホワイトベースに乗っていい根拠がないからである。

しかし、パオロの「子供たちに託す」という言葉によって初めてブライトたちはホワイトベースに乗る正統性を得た。ここからブライトたちの物語が本格的に始まるのだ。

このように考えれば、この回でパオロが死んだ理由も明らかになる。パオロは若いブライトたちにホワイトベースを託すという物語上の役割を果たしたために死んだのだ。この回でパオロが死ぬのはただの偶然やなりゆきではなく、物語上の必然なのである。

なお、ここでパオロからブライトたちに託されたのは物語上の正統性であって、地球連邦軍内における正当性ではない。なので地球についた時点で軍事裁判にかけられても文句は言えないだろう。その意味でブライトたちの立場が危ういことには変わりはない。

アムロvsシャア(3戦目)

アムロガンダムリュウコアファイターで出撃。

前方からはシャアの赤ザクと、マチュ、フィックスのザク2機が接近する。ザク2機は第3話でガデムが命がけでシャアに託したものだ。

ルナツーの出入口はマゼランがふさいでしまっているので、連邦軍は軍艦を出せない。戦力的には分が悪いが、果たして!?

シャアは相変わらずの戦上手である。ガンダムの攻撃をすべてかわし反撃する。シャアの攻撃を受けるガンダムは防戦一方だ。リュウの援護がなければ危うい戦いである。

赤ザクの得物のオノがガンダムのバズーカを切り裂く。連邦軍の新型モビルスーツの高性能が強調されがちな中で、ジオンのザクとてやるときはやるのだ。

しかし、ガンダムの二刀流でザク1機を撃破。その爆風を受けて耐えるガンダム

ホワイトベース初の砲撃!

ワッケイン「マゼランを排除する!」

ルナツー基地内でホワイトベースの主砲「メガ粒子砲」をぶっぱなし、出入口をふさぐマゼランを排除する作戦だ。

作中でホワイトベース初めての主砲による砲撃である。しかし初の攻撃目標が味方艦というところに悲哀を感じる。よくよく運のない艦だ。

ブライト「アムロ!通路の前からどくんだ!」
アムロ「え?」
ワッケイン「発射!」

アムロがまだ避けてないぞ!ワッケインアムロに対するいやがらせか。

ホワイトベースのメガ粒子砲の威力がすさまじい。マゼランだけでなく外にいたザク1機もろとも跡形もなく吹き飛ばしている。

先ほど爆風に耐えたガンダムとの対比から、ガンダムの装甲の厚さ、ホワイトベースの砲撃の威力を示す描写である。

アムロとシャアは間一髪で回避に成功。ムサイも危ないところであった。

ザク2機がやられ撤退するシャアとムサイ。今回も危なかったが、ホワイトベースの性能により何とか切り抜けた形だ。

地球へ向かうホワイトベース

地球へ向けて出港するホワイトベース。隣にもう1隻戦艦が並走しているが、これは護衛のためか。

ワッケイン「ジオンとの戦いがまだまだ困難を極めるというとき、我々は学ぶべき人を次々と失ってゆく。寒い時代だと思わんか?」

軍人として数々の先輩士官の死を目撃してきたであろうワッケイン。彼にとってもパオロの死は堪えるようだ。残された自分たちはまだまだ未熟だし、ブライトたちのような少年少女に頼らなければならない苦境を憂いている。「寒い時代」とは詩的な表現だ。この場面のワッケインは実にかっこいい。この場面は。

ブライト「艦長、あなたのホワイトベースは私達の手で必ず地球にお届けいたします」

宇宙へ放たれる艦長。これは宇宙で行う「水葬」である。

ja.wikipedia.org

この場面で着目すべきはだれも敬礼をしていないことである。民間人ばかりといはいえ、ブライトやリュウもしていないことには少々違和感があるが。

カプセルを見つめるアムロたち。悲壮な面持ちである。自分たちが死と隣り合わせの状況にあることを再認識しているかのようだ。

アムロ「(と、父さん、どこに行ったんだろう?)」

アムロの父テム・レイは第1話でコロニーに開いた穴から宇宙へ投げ出されてしまい、行方不明である。アムロはそのことを知ってか知らずか、宇宙に放たれるパオロを見て父を回想する。

前半のシャアがアルテイシアを回想するシーンと韻を踏んでいる。

第4話の感想

冒頭の月・地球・ルナツーの位置関係を描写する構図は本当に見事の一言である。

ストーリーとしてはパオロが死に、ホワイトベースが少年たちに託されるという画期となる回であった。

まっすぐで純真な少年少女と「汚い大人」という対比も、登場人物のセリフや仕草などで丁寧に描かれている。

今回は説明ゼリフが多かった。説明ゼリフはどうしても冗長になってしまうが、そのおかげで「機動戦士ガンダム」の世界の設定や状況をよく理解できた。

全編にわたって作画が安定しない点が気になってしまうが、まぁそういう回もあるさ。

さて、ガデムの形見であるザク2機を失ってしまったシャア。いよいよホワイトベース攻撃の手段がなくなってしまった。

しかし、ここで引き下がるような男ではあるまい。次の手を打ってくるはずだ。

ホワイトベースは無事地球にたどり着くことができるのか!?

素人集団vsプロの軍隊。ホワイトベースの奇襲作戦は成功するか!?~機動戦士ガンダム 第3話「敵の補給艦を叩け!」感想

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敵の補給艦を叩け!

ルナツーまであと1時間

キッカ「缶詰の配給です」
フラウボウ「こちらは何人ですか?」
民間人男「7人かな」
民間人女「あの、ミルクのお湯、先程お願いしたんですけど」
キッカ「これですよ」
民間人男「ルナツーにはいつ着きます?」
フラウボウ「あと1時間ほどです」
民間人女「あの、食べ物の配給はいつ来るの?」
セイラ「そこまで来てますよ」

ホワイトベースには避難民も多数いる。戦闘行為以外にも避難民への対応も必要だ。それも少ない人員でである。ホワイトベースの窮状を示す描写である。

ここでさりげなくルナツーまであと1時間ほどの距離まできていることが示される。この情報がのちほどジオン軍に先制攻撃を仕掛けるかどうかの判断の際にきいてくる。

セイラとブライト

ブライト「セイラさん、サイド7に来る前はどこにいたんです?」
セイラ「答える必要あるのかしら?」
ブライト「別に」
セイラ「地球です」
ブライト「宇宙に出たの」
セイラ「え?」
ブライト「初めてなんですよ」
セイラ「エリートでらっしゃったのね」
ブライト「皮肉ですか?」
セイラ「弱気は禁物でしょ、ブライトさん」

確かにセイラは「強すぎる」。アルテイシアはそんなこと言わない。

この場面、ブライトがちょっかい出そうとしてセイラにうまいことあしらわれたシーンに見える。そうだとして、ブライトはそんなことしてる場合じゃないだろう。

宇宙に出ない「エリート」とジオンの戦争目的

ブライトは今回が初めての宇宙らしい。それについてセイラが「エリートでらっしゃったのね」と返す。

なぜ地球にいることが「エリート」となるのか。ここから地球に暮らす者とコロニーに暮らす者との間の階層差を見て取ることができる。

冒頭ナレーションで説明されるように、宇宙への移民の目的は増えすぎた人口を宇宙へ移し、地球の人口を抑制することにある。

こうした移民政策において宇宙へ移住するのはどんな人達か。おそらくは低い階層の人達であろう。半ば強制的に宇宙へ移住させられた人もいるのではないか。

他方、上流階級やエリート層は地球での生活を約束されている。地球に住む者とコロニーに住む者との階層差は明白だ。

こうした中でコロニー住人に対する地球住人の特権意識・差別意識が醸成されたとしても不思議ではない。自分たちは地球で大地の恵みを受けつつ生活することができる選ばれた人間だという特権意識、あいつらは宇宙空間の狭いコロニー内に押し込められ、そこで一生を終える人間だという差別意識である。

コロニーでの生活も推して知るべしであろう。コロニーへの補給は滞りなく行われていたのだろうか、コロニーが故障した場合の対処は適切に行われたのだろうか、隕石やデブリの衝突といった突発的な事故の際救助活動は迅速に行われたのか、強制的に移住させられた人々の生活はどうだったのか、住む場所や食べるもの、収入のあては用意されていたのだろうか、故郷である地球へ帰ることは許されていたのだろうか、その際の費用は誰が負担するのか、考えていけばきりがない。

それは「棄民」という側面も持ってたのかもしれない。

ここまでくればジオン公国連邦政府独立戦争を挑んだ理由も自ずと明かとなってくる。これは地球連邦政府の「圧制と差別」からの解放を目指したコロニー住人による「自由と尊厳」の獲得闘争なのだ。

ジオン軍の消耗

シャア「パプア補給艦?あんな老朽艦では十分な補給物資は」
ドズル「現状を考えるんだ」
シャア「しかし」
ドズル「十分な戦力で戦える昔とは違うんだぞ。シャア、ザクは2機送った。ムサイを潰しても連邦の機密を手に入れるんだ」
シャア「はっ。(3機のザクを要求してこれか。敵のモビルスーツの性能が皆目わからんのに)」

戦争の長期化によってジオンも確実に戦力を消耗している。性能のよくわからない連邦のモビルスーツとやりあっていけるのか、シャアも思ったように補給を得られず落胆の様子だ。

舐められなくないブライト

ミライ「シャアのムサイ、なぜ攻撃をしないのかしら?」
ブライト「このホワイトベースの性能が読めないからだろうな」
ミライ「それと武器を使い果たしているということも考えられるわね」
ブライト「ああ、しかし」
ミライ「しかし?」
ブライト「我々にそう思わせる作戦なのかもしれない」
オスカー「シャアのムサイに接近する船があります」
ミライ「援軍?」
オスカー「わかりません。15分後に接触します」
セイラ「ミライの推測が当たったんじゃなくて?」
ブライト「軽率には言えんな、巡洋艦だったらどうする?」

第2話で赤い彗星シャアの襲撃をかろうじて切り抜けたホワイトベース。シャアの追撃を警戒しつつルナツーへ向かう。

しかし、ムサイはホワイトベースの後をついてくるけれども、どういうわけか攻撃を仕掛けてこない。

ブライトは「ホワイトベースの性能が読めないからだ」という。ホワイトベース連邦軍の新造戦艦である。ジオン軍にはその性能の全貌はまだ知られていない。シャアといえども相手の戦力を計りかねていると見たわけだ。

他方、ミライは「武器を使い果たしているから」と見ている。ブライトはこのミライの意見に対し一定の理解を示しつつも「我々にそう思わせる作戦なのかもしれない」と返す。

ホワイトベースほぼ唯一の軍人であるブライトにしてみれば、戦況について一民間人に言い負かされるわけにはいかない。

しかし、その直後ムサイに接近する船が発見され、セイラに「ミライの推測が当たったんじゃなくて?」と言われてしまう。ミライの見解が正解だったわけだが、軍人としてのプライドが許さないブライト、最後に「軽率には言えんな、巡洋艦だったらどうする?」と捨て台詞のように言ってしまう。

「部下」に舐められまいと必死なブライトの姿がうかがえる。

出撃!?

ミライ「シャアのムサイに武器を補給させる前なら、私達にもアムロにも戦えるかもしれないわ」
ブライト「攻撃に出ろというのか?」
ミライ「もう一度シャアの攻撃を受けて守りきれます、ブライトさん?」
ブライト「我々は正式な戦闘員を一人だって持っちゃいないんだ。」

ルナツーまであと1時間。しかし、敵の補給は25分あれば完了してしまう。ルナツー連邦軍基地に逃げ込むには時間的に難しそうだ。補給を受け戦力を回復したシャアに攻撃されれば守り切れる保証はない。ならば補給を受ける前にシャアをたたいてしまおうというのがミライの考えである。ミライ、実に切れる。

これに対しなかなか決断できないブライト。とどめはセイラの「艦長さんに聞いてみたら?」。アルテイシアはそn【略】

ハヤトの伏線回収

ここでブライトがハヤトに話を振る。

ハヤト「相手がいくら大きい人でも腰を引いた瞬間とかバランスを崩した時なら倒せるものです。これ柔道の話ですけど」
ブライト「・・・。」

ハヤトは柔道にたとえて回答する。ようするに補給前ならやれるかもしれないということである。

ちなみに、第1話の初登場シーンでハヤトは柔道着を肩に掛けているが、なんとそれがこの発言の伏線になっていたのである!

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・・・この発言のためだけにわざわざ柔道着を作画したのだろうか。

出撃決まる!多数決で・・・

ここでブライトが出撃するか否かを多数決で決めると言い出した。ブリッジに集められた者はおそらくほとんどが民間人であろう。その多数決で軍事作戦を決めるのは軍隊としてあり得ない。決断しきれないブライトの苦悩が続く。

採決中、アムロをじっと見つめるブライト。アムロもブライトから視線を外さない。ブライトが挙手した後におもむろに手を挙げるアムロ

出撃することに決まった。多数決で。

実は有能な指揮官!?

ひょっとしたらブライトは多数決と言いながらも、本当はアムロが出撃に賛成するかどうかを見たかったのかもしれない。

連邦軍にとって最も警戒しなければならないのはシャアの赤いザクである。現状、これを抑えることができるのはアムロの乗ったガンダムしかない。作戦が成功するかどうかはアムロにかかっている。

出撃するということは、アムロにもう一度ガンダムに乗って最前線に向かい命を懸けて戦えと命令することである。当然ながらそこには命令する者とされる者との間の信頼関係が不可欠だ。

アムロはブライトに対していい感情を持っていない。ブライトが上官としてアムロに出撃を命じてもへそを曲げてしまうかもしれない。そうなれば作戦の失敗は火を見るより明らかだ。

ブライト「甘ったれるな。ガンダムを任されたからにはきさまはパイロットなのだ。この船を守る義務がある」(第2話)

第2話の終わり、こうアムロを叱責するブライトだがこれは軍隊の論理である。軍人としての教育を受けていないアムロには伝わらない。

そこでアムロ自ら出撃を決断したという形をとりたかったのだろう。

最初ブライトが多数決といったとき「こいつ本気か!?」と思ったが、ここまで考えていったのだとすればかなり有能な指揮官であるといえるだろう。

・・・まぁ、自分で決めきれなかっただけだろうけど。

手引書をよく読んでおけ!

ブライト「よし、決まった。出撃する。アムロガンダムリュウコアファイター、場合によってはガンタンクの出撃もありうる。ビーム砲スタンバイ急げ。ホワイトベース180度回頭」
ブライト「8分後に敵が視界に入る。それまでに手引書をよく読んでおけ。ともかく撃って援護ができればいい。ただしガンダムコアファイターには当てるな」

ホワイトベースの作戦目標はシャアのムサイの殲滅、それができなくても敵の補給を邪魔してルナツーへ逃げ込む時間を稼ぐことだ。

手引書を読みながら準備を整える素人乗組員達。こんな状況で作戦は成功するのだろうか!?

本職の軍人が役に立たない

アムロリュウの奴、軍人のくせに」
リュウ「上がるなだと?敵は目の前だぞ」
アムロ「このまま突っ込んだら逆光線で戦わなくちゃならないことに気付かないのか。まわり込むんだ」
リュウ「おっ見えたぞ。アムロの奴、素人のくせによく気がつく。太陽を背にして攻撃しようっていうわけか」

本職の軍人であるリュウと素人のアムロ。しかし、実際の行動はアムロの方が本職っぽい。ブライトもそうだが、今回は本職の軍人の無能さが繰り返し描かれている。ホワイトベースが素人集団であることを示す演出だ。

ミノフスキー粒子

ガデム「シャア変だと思わんか?ここは敵の前線基地に近いとはいえちょうど裏側にあたる。ミノフスキー粒子の濃度が強すぎると思うがな」
シャア「同感だなガデム」
ドレン「近くに敵艦が?」
シャア「ありうるな」

会話から察するに、ミノフスキー粒子とは戦場付近で濃度が濃くなる特殊な粒子のようだ。この粒子が濃くなった場合には敵艦が近くにいる可能性が高まるということだろう。煙幕のようなものだろうか。

ガデムはわずかな手がかりから戦況を正確に把握している。この会話でガデムも歴戦の猛者であることが描かれる。

先制攻撃成功!

バズーカをぶっぱなすアムロ。見事パプア補給艦のコンベアパイプを破壊することに成功。

シャア「ガデム、運んできたザクを放出しろ」
ガデム「ああ、なんとかしよう」
シャア「マチュ、フィックス、船の外でザクに乗り移る支度をしておけ。私は先にモビルスーツで出撃する」

しかし、ただでは済ませないのがシャアである。即座に作戦を立てガデムと部下に指示をする。連邦軍の攻撃を受けている中で悠長に補給を受ける余裕はない。そこで船外にザクを放出、そこに直接乗り込む作戦である。

シャア自身もザクで出撃し、マチュとフィックスがザクに搭乗するまでの時間稼ぎをする。やはりできる男である。

ジオン軍の統制の取れた指揮・命令系統と各自が自分の職務を遂行しようとしている点がみごとである。ホワイトベースとは大違いだ。

アムロvsシャア(2戦目)

シャア「ふふ、モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる!」

ガンダムのバズーカをかわし、後ろに回り込むシャア。ガンダムにザクのボディブローが決まる。戦闘を有利に進めるシャア。やはりパイロットの力量差は明らかである。

ムサイピンチ!連邦軍チャンス!

ドレン「シャア少佐、敵の新型艦の木馬が攻撃を掛けてきます」
シャア「なに?私が行くまでなんとか持ちこたえろ」
アムロ「艦にはやらせるものか。ブライトと約束したんだ。ぼ、僕がシャアを引きつけておくってな」

ムサイは主砲メガ砲も撃てず、リュウコアファイターの攻撃で補給もままならない。この状態でホワイトベースの攻撃を受ければ沈んでしまう。シャアはガンダムをほうっておいてムサイの援護に向かう。

シャアに必死に食らいつくアムロ。このままガンダムがシャアをひきつけておけばホワイトベースに攻撃のチャンスがやってくる。

連邦軍が有利な展開。やはり出撃は正解だった。多数決の勝利だ!

リュウが邪魔

カイ「ええい、リュウの奴。あれじゃあこっちの主砲が撃てねえじゃねえか。ハヤトっていったな。伝えろ、リュウにどけってよ」

ハヤト「ブライトさん、お願いです、コアファイターが邪魔でムサイを狙えないってカイさんが言ってます」
ブライト「了解。リュウ応答しろ。リュウ!奴め、無線回線を切っている」
ミライ「じゃ敵をやっつけられないの!?」

ここでリュウが大失態。ムサイとパプア補給艦の周辺をうろちょろして補給を妨害することには成功しているが、ホワイトベースの攻撃の邪魔にもなっている。無線回線を切っているので指示もできない。そうこうしているうちにシャアもガンダムを振り切り接近しつつある。

作戦変更ーガンタンク出撃

ハヤト「ブライトさん、カイさんが大型特殊の免許をいくつか持っているんです」
ブライト「えっ」
ハヤト「カイの親父さん技術者で」
ブライト「わかった。特殊免許と言ったな?」
ハヤト「はい。戦車みたいなモビルスーツありますね?」
ブライト「あれは2人乗りだ」
ハヤト「この船の主砲と同じようなもんでしょ、撃てますよ、教えてもらったから」
ブライト「ガンタンクで敵に接近するつもりか」
ハヤト「はい。ホワイトベースに気を取られていますから大丈夫です、できますよ」
ブライト「頼む」
ハヤト「はい」

この会話の見どころは、ハヤトが「カイの親父さん技術者で・・・」とだらだら余計な話を始めそうになった瞬間にブライトが「わかった」と制止するシーンである。必要最小限度の会話で意思疎通するジオンに比べホワイトベースは素人丸出しだ。

ホワイトベースの主砲による攻撃は諦め、ガンタンクを出撃、敵艦に接近して攻撃する作戦に変更。ガンタンクの初出撃だ。

ここで注目すべきはガンタンクを出撃させようと言ったのがハヤトあるいはカイだという点である。ミライの「補給前に叩こう作戦」や、アムロの「逆光線作戦」につづき「冴えわたる素人民間人」と「使えない本職の軍人」という構図がここでも繰り返されている。

先に撃たれてしまうホワイトベース

ホワイトベースがもたもたしているうちにムサイのメガ粒子砲の準備が整った。砲撃を受けるホワイトベース

ブライト「カイ、ハヤト、ガンタンクはどうした?砲撃を!砲撃を!」
ミライ「ブライトさん、落ち着いてください。ガンタンクは今ホワイトベースから出るところなんです。」

砲撃を受けて取り乱すブライト。ミライに「落ち着いてください」と言われてしまう始末。やはりまだ若い。先制攻撃を受けた時のシャアと比べれば指揮官としての差は明らかである。

パプア補給艦沈む

ハヤト「あと50メートル接近してください、確実に有効射程距離に入ります」
カイ「ミサイル撃ってきたらどうするんだよ?」
ハヤト「補給中ですから撃ってこないと思います」
カイ「撃ってきたらどうするんだよ?」
ハヤト「わかりません。あと10メートル。撃ちます」

車内の会話は素人そのもの。敵艦に近づいて砲撃する以外のことは何も考えられていないことがよくわかる。

ガンタンクの砲撃を受けて沈むパプア補給艦。連邦軍の作戦成功である。

しかし、ガデムがモビルスーツで間一髪でザク2機を放出。

これをみたコアファイターが攻撃を仕掛けるがシャアに妨害されてしまう。ガデムとシャアはなんとかザク2機を守り切ったのである。

アムロvsガデム

ガデムの乗っているザクは旧型のようである。パプア補給艦自体が古いタイプなので乗っているモビルスーツも旧型ということであろう。

その旧型ザクでガンダムに挑むガデム。

シャアの乗るザクでボディブローを食らわしても蹴りをいれてもショルダータックルをかましてもビクともしなかったガンダムである。

旧型ザクで同じようにショルダータックルをかますがどうともないガンダム

返り討ちにあってしまったガデムだが、アムロの操縦は素人そのもの。敗因はあくまでモビルスーツの性能差である。

素人集団ホワイトベース

シャア「パプアがやられ、ガデムも死んだ。どういうことなのだ。モビルスーツにしろ、あの船にしろ、明らかに連邦軍の新兵器の高性能の前に敗北を喫した。それはわかる。しかし、いったいどういうことなのだ。連中は戦法も未熟なら、戦い方もまるで素人だ」

答えは簡単、本当に素人集団だからである。

シャアはジーンとデニムの奇襲(第1話)によって連邦軍の正規兵がほとんど死んでしまったことを知らないのだろう。

第2話でもあったが、こうした「双方の持っている情報の違い」「双方ともに相手の手札すべてが見えているわけではない」という点が本作のリアリティを高めているし、緊迫感を醸し出している。見事な演出である。

素直になれないブライト

カイ「ははっ、案ずるより産むが安しってね」
ブライト「甘ったれるな。アムロがシャアを引きつけておいてくれたからガンタンクの攻撃ができたんだぞ」

得意げに話すカイに対し「アムロのおかげだ」「いい気になるな」と諭すブライト。この時点ではまだアムロリュウはブリッジに帰ってきていない。ブライトはアムロのいないところではアムロの活躍をきちんと認めている。

リュウ「や、ブライトすまんな。俺無線切ってたんだってなぁ」
ブライト「ああ、気をつけてくれよ。訓練を思い出してな。」

「無線切ってたんだってなぁ」ってそんな軽い失態ではない。そのせいでホワイトベースは主砲での攻撃ができなかったのだ。そのままであればホワイトベースはザクの補給を受けたジオン軍に急襲されただろう。

ガンタンク出撃という次善の策がとれたからなんとかなったようなもので、全滅していても不思議ではない。

ブライト「それからアムロ、君は敵のむこうを回り込みすぎだ」
リュウ「いいや、ありゃああれでいいんだ。なあ」
アムロ「はい、シャアが速すぎたんです」
ブライト「シャアは赤い彗星と言われている男だろ。お前だって一度戦っているはずだ、もっと立ち向かい方を考えとけ」
アムロ「はい」

先ほどカイに対して「アムロのおかげだ」と言っていたのだからアムロに対しても同じことを言ってやればいいのに、「敵のむこうを回り込みすぎだ」とか「もっと立ち向かい方を考えとけ」とまたお小言である。素直になれないブライト。

ブライトはアムロの活躍を認めている。しかし、アムロに面と向かってそれを口にすることはない。そういう態度のブライトをみてアムロも「リュウさん、僕ほんとにあの人を殴りたくなってきた。」と腹を立てている。要はどちらもまだガキであり未熟なのだ。

第3話の感想ー素人集団vsプロの軍隊

今回も濃密な回であった。

素人集団ホワイトベースvsプロの軍隊ジオンという演出が見事である。

先制攻撃を受け苦しいながらもムサイとパプア補給艦、モビルスーツが連携をとって連邦軍に当たる姿はプロ集団と呼ぶにふさわしい。特にガデムがシャアにザクを渡そうと奮闘する様は補給部隊の意地を見せた名場面である。

他方、連邦軍は素人集団である。軍隊の訓練を受けたはずのブライトやリュウも頼りにならない。ガンダムの性能はいいかもしれないがパイロットは素人で戦い方も雑だ。

結局ホワイトベースは主砲を発射しないまま戦闘を終えた。シャアにしてみれば、敵の本艦木馬がムサイを狙っているにもかかわらずコアファイターがうろちょろして撃ちあぐねている様は滑稽そのもの。「どういうことなのだ?」「何やってんだこいつら?」と訝しむのも無理はない。

しかし、今回の戦闘でルナツーへ逃げ込む時間は確保できたホワイトベースルナツー連邦軍基地。正規兵によってホワイトベースガンダムを運用できるようになればシャアともやりあっていけるだろう。

これからV作戦の本領発揮となるのか!?