壊滅状態の連邦軍が赤い彗星シャアを撃退できた理由とは?~機動戦士ガンダム 第2話「ガンダム破壊命令」感想
壊滅状態の連邦軍
ザク2機の襲撃を受け大打撃を被った連邦軍。
連邦兵「民間人でもいいんだ。男手をまわしてくれ」
正規の兵の大多数がやられてしまって圧倒的人手不足である。艦長も負傷してしまい指揮系統にも不安要素が発生。セイラに促されてフラウボウも治療に駆り出される始末。
ブライト「サイド7に入った者は技師、軍人共に全滅です。たった2機のザクのために。負傷兵の中で戦闘に耐えられる者は10名とはおりません」
まさに壊滅状態である。
ホワイトベースは何人乗り?
ホワイトベースの規模の軍艦を動かすのにどれくらいの人間が必要なのだろうか。
超弩級戦艦大和は3000人以上の乗組員がいたという。そこまでの規模ではないとしても、少なくとも数百人以上は乗組員がいると考えるべきだろう。
それが残り10名というのであるからもはや戦争どころではない。ホワイトベース自体を動かせるのかどうかというレベルであろう。
ミライ・ヤシマ
ミライ「あ、あの、クルーザー級のスペースグライダーのライセンスが役に立つとは思いませんが、わたくしでよければ」
パオロ「君は?」
ミライ「ミライ・ヤシマと申します」
パオロ「そうか、あのヤシマ家の」
ミライがホワイトベースの操縦を志願。パオロがその名前を聞いて「あのヤシマ家の」と反応した。どうやらミライはいいところのお嬢さんのようだ。
新型モビルスーツの性能が気になるシャア
一方、ジオン軍。右腕を負傷したスレンダーが状況報告。
と半信半疑の模様。このあとガンダムの性能にビビりまくることになるとも知らずに。
ドズル中将
シャアの上司、ドズル中将の登場である。
ドズル「ゆうべはな、きさまの作戦終了を祝うつもりでおった。きさまがもたもたしてくれたおかげで晩餐の支度はすべて無駄になったんだ、ええ」
「きさまのせいで晩餐は無駄になった」と強い口調で言ってはいるが、その実は部下思いの優しい上司である。
シャア「私もよくよく運のない男だな。作戦が終わっての帰り道であんな獲物に出会うなどとは」(第1話)
シャアは作戦終了後、帰還途中に連邦の新造戦艦ホワイトベースを発見し、サイド7へ急遽向かうこととなった。ホワイトベースさえ見つけなければ昨夜のうちにドズルのもとに帰還し、おいしいご飯にありつけたのだろう。よくよく運のない男である。
補給を求めるシャア
ドズル「モビルスーツザクを3機もなくしたのか?」
シャア「は、中将。そのうちの2機は、連邦軍のたった1機のモビルスーツのために」
ここのやり取りは少々変だ。
第1話でサイド7に潜入したザクは3機。そのうち2機(ジーンとデニムの分)はガンダムが撃退した。
しかしスレンダーの乗っていたザクはまだ健在のはずである。第1話でもスレンダーのザクは破壊されていない。また、このあとスレンダーのザクとシャアの赤いザク合計2機でガンダムと対峙するシーンがある。
ドズルに「3機もなくしたのか」と言われたシャアはそれを否定しなかった。2機失ったといえば補給は2機、3機失ったといえば補給は3機、多く補給してもらえるならそちらが得策と考えたのだろうか。
V作戦のデータを得るために再びサイド7へ
補給を待たずに再度サイド7に潜入したシャア。
ザク2機を失ったとはいえ連邦軍に与えた被害も甚大だ。連邦軍が態勢を立て直す前に一気に作戦を進めた方がよいとの判断だろう。
連邦軍のモビルスーツをカメラに収め、ドズルの命令を的確にこなしていく。実にできる男である。
パオロとブライトのアムロ評
ガンダムを操縦していたのが子供だったことに驚くパオロとブライト。
ブライト「なぜそこにいる?」
アムロ「その声はさっき無線で僕にガンダム関係の部品を運べって命令した人ですね?」
ブライト「艦長、降ろさせます。」
パオロ「パイロットが、生き残っていたらな。」
ここのやり取りはアムロのガキっぽい反応とブライトの見切りの早さが見ものである。
ブライトはガンダムに乗っているのは「サイド7でテストをやっていたパイロット」ではないかと思っていたが、ふたをあけてみれば乗っているのは子供だった。
ブライトの「なぜそこにいる」という問いは「なぜお前みたいな子供が乗っているんだ?」「正規のパイロットはどうした?」という意味である。それに対するアムロの回答は「さっき俺に命令したヤツだな」というなんとも子供じみたものだった。
この回答をきいてブライトはこいつにガンダムは任せられないと即断し、「降ろさせます。」といっている。つまりブライトの中で「アムロは降板」となったわけだ。子供だろうが容赦はない。
しかし、パオロの判断は若干アムロ寄りで、「パイロットが生き残っていればアムロは降板、生き残っていなければ続投」という判断である。現にガンダムを動かしていること、ザク2機を撃退したことからすればアムロを続投させる判断も十分アリだろう。
血気盛んな若武者ブライトと酸いも甘いも噛み分ける往年の熟練兵パオロの対比が小気味好いシーンである。
カイとセイラ
セイラ(ぺしっ!)「それでも男ですか、軟弱者」
カイ「な、なんだってんだよ!」
セイラ「あなたみたいな人、サイド7に一人で残っているといいんです」
カイ「お高くとまりやがって。あ、あんた、セイ、セイラとかいったよな?」
セイラ「そんな不良みたいな口の利き方おやめなさい。」
初登場シーンでいきなりセイラにぶたれるカイ。
このシーンはカイのクズっぷりがよく出ていて個人的に好きである。
リュウがけが人をエレベーターに運び込もうとしているのに「乗るのか?」はないだろう。けが人も乗せずに一人で行くつもりだったのか。
さらに「あ、あんた、セイ、セイラとかいったよな?」という発言は「お前の顔と名前は覚えたぞ」といういかにもチンピラっぽいものだ。
第一印象最悪のカイとセイラ、今後どうなっていくのか。最近のアニメなら「どうしてこの2人が!?」的な展開もあるかもしれないが、多分くっつくことはないだろう。(予言)
パオロとブライトのアムロ評(2度目)
再びホワイトベース内、アムロとパオロとブライトの会話である。
パオロ「ガンダム関係の部品で使えない物はすべて処分させろ。ガンダムにはビームライフルを用意させよう」
パオロ「初陣にはやや若すぎるが、古来15~6歳の出陣がなかったわけではない、君達に期待する」
ブライト「は、艦長。アムロ、聞こえるか。サイド7に残ったガンダムのパーツを破壊しろ」
アムロ「どうしてです?まだ3機分ぐらいは」
ブライト「ジオンに機密を渡すというのか?」
ブライト「やり方はわかるか?」
アムロ「ス、スーパーナパームとかいうのを使うなら」
ブライト「艦長」
パオロ「アムロ君の判断は的確だ。任せなさい。」
ブライトがアムロにサイド7に残ったガンダムパーツの破壊を命じる。これに対するアムロの返事は「どうしてです?」。
軍隊の基本は上意下達。トップが決めた作戦をその通りに遂行するのが現場の兵士の役目である。きちんとした軍事訓練を受けているブライトにしてみれば、上官の命令に対して「どうして?」と聞き返すアムロはイライラする存在だろう。軍隊の何たるかが分かっていないのだ。
ブライトとアムロはうまくやっていけるのだろうか。先行きは決して明るくはない。
セイラとシャア
シャアがセイラの銃を蹴り飛ばすシーン。距離感がおかしい気がするがまぁいいか。
セイラとシャアはどうやら兄妹のようだ。一方がジオン、他方が連邦に所属し、兄妹で殺し合う構図になっている。ここに至るまでにこの兄妹に何があったのだろうか。今後の展開が気になる演出である。
シャア「アルテイシアにしては強すぎる」
カイもひっぱたかれたしね。
この兄妹、どれくらい離れ離れだったのかは分からないが、シャアにしてみれば幼いころの優しい優しいアルテイシアの面影もないセイラにびっくりしたのだろう。
しかし、かなしいかな、人は成長し変わっていくのである。思い出の中のアルテイシアに固執してしまうようならそれがシャアの弱点となりかねない。
シャア逃走
逃走中にカメラを破壊されたシャア。連邦軍の新型モビルスーツの情報を持って帰るという目的は潰えてしまった。しかし手際よく手榴弾で突破口を開きなんとか逃げ延びる。
戦場で人を撃てるか?
ガンダムで出撃したアムロが逃げるジオン兵を狙撃しようとするがなかなか撃てない。数時間前まで一民間人だったアムロが撃てないのも無理はない。
第二次世界大戦でも、次のような事実がありました。アメリカの陸軍の場合、敵との遭遇戦に際して、火線に並ぶ兵士100人のうち、平均してわずか15人から20人しか「自分の武器を使っていなかった〔発砲しなかった〕」のです。その割合は、戦闘が1日中続こうが、2・3日続こうが、常に一定でした。何千・何万という兵士を対象に調査をしても、その結果は同じでした。
(戦争と文化(5)――戦闘でも人は人を殺さない!)
ことほどさように人は人を撃てないのである。これを克服するための訓練法が開発され、時代が下るにつれ、発砲率・命中率が「改善」していく。
第二次世界大戦では発砲率が15-20%だったのに、朝鮮戦争では55%に、ベトナム戦争では90-95%に上昇しました(ただし、グロスマンの挙げた数字を信じるならば、命中率については上述のとおりです)。現在では、さらにリアルな訓練法が開発され、発砲率・命中率ともに上がっているはずです。
(戦争と文化(5)――戦闘でも人は人を殺さない!)
前半パートでパオロが受傷するシーン、砲台にいるパオロに「代わります」というリュウ。パオロはこうかえす。
パオロ「パイロット候補生の君に撃てるのか?」
パオロは戦場で兵士が「撃てない」ことを十分に分かっている。
その意味で、逃げるシャアをためらいつつも銃撃しているハヤトやカイはなかなかすごいと言えなくもないが、どこまで本気で狙っていたかは推して知るべしであろう。
なお、この手の話しでよく引用されるマーシャルの研究については、近年になって疑問も呈されているようだ。
例えば、元米陸軍指揮幕僚大学教授で軍事史家のロジャー・スピラーは、マーシャルの死後にテキサス大学図書館に寄託されたマーシャルの資料の中に、兵士に発砲の有無を問う質問の記録はなく、マーシャルの元同僚の証言もないことも明らかにし、発砲率に関するデータは裏付けがない捏造とみています。(『戦場の兵士の大部分は敵を射撃しない』という神話)
人は人を撃つことができるのか、今後のさらなる研究が待たれる。
ホワイトベース出港ーアムロvsシャア
いよいよホワイトベースがサイド7を出港した。しかし、赤い彗星のシャアがザクで出撃。それを知ったホワイトベースクルーの顔色が変わる。
パオロ「ルウム戦役で5隻の戦艦がシャア1人の為に撃破された。に、逃げろ。」
ブライトがとめるのも無理はない。ここでガンダムが破壊されてしまえばホワイトベースも無事ではすまない。連邦軍のV作戦は失敗に終わる。
シャアの動きはまさに百戦錬磨。自分の手足のようにザクを操りガンダムの攻撃をかわしつつ、反撃も行う。しかし...
シャア「どうだ!ば、馬鹿な、直撃のはずだ」
シャア「速い、な、なんという運動性。」
シャア「ス、スレンダー。い、一撃で、一撃で撃破か。な、なんということだ、あのモビルスーツは戦艦並のビーム砲を持っているのか」
シャア「火力が違いすぎる」
「当たらなければどうということはない」とか言いながら、終始ビビりっぱなしのシャアである。
シャア撤退
シャアにとって恐るべきはガンダムのビームライフルである。おそらく1対1ならかわすこともできるだろうが、コアファイターの援護がある場合は難しい。スレンダーのザクもやられてしまい、援護も得られない。補給前で増援も期待できない現状では引くしかないと判断したのだろう。
しかし、実際にはガンダムのビームライフルはエネルギー切れ。シャアが撤退せず攻撃を継続していたらガンダムを撃退できたかもしれない。
お互い相手の手札のすべてが見えているわけではない状況下、連邦軍はまさにギリギリのところでシャアを追い払うことに成功したのである。
アムロとブライトの初対面
ブライト「ガンダムの性能をあてにしすぎる、戦いはもっと有効に行うべきだ」
アムロ「な、なに!?」
ブライト「甘ったれるな。ガンダムを任されたからにはきさまはパイロットなのだ。この船を守る義務がある」
アムロ「い、言ったな」
ブライト「こう言わざるをえないのが現在の我々の状態なのだ。やれなければ、今からでもサイド7に帰るんだな」
ブリッジに呼ばれたアムロ。
ガンダムで赤い彗星のシャアを撃退した、自分がガンダムを動かしてなければ全滅もあり得た、ねぎらいの言葉くらいはあってもいいのではと思っていたのであろう。ブライトからいきなりお小言に泡を食った様子である。
ただの民間人で偶然居合わせただけのアムロにとって少々キツい気もするが。
しかし、ブライトの立場からすれば、他にパイロットもいない中でガンダムはアムロに乗ってもらうしかない。戦い方に上官から指導が入るのは当然だ。「甘ったれ」はいらないのである。
ルナツー
ナレーション「ルナツー、宇宙都市建設の鉱物資源をうるために運ばれてきた小惑星である。今、ここには連邦軍の最前線基地がある」
資源獲得のために小惑星を運んでくると聞くと、そんな絵空事をと思ってしまうかもしれないが、現在大真面目に研究が進められている分野である。
近年サンプルリターンに世界で初めて成功し映画にもなった「はやぶさ」もこれに関連するものである。
第2話の感想
赤い彗星シャアを撃退し、ホワイトベースは危機的状況を一旦は脱した。
しかし、正規の兵はほとんどおらず、乗員は素人民間人ばかり。ガンダムも扱いの難しそうなパイロットに頼るほかない。ルナツーの連邦軍基地へたどり着ければ一安心といったところか。
しかし、補給が終わればジオン軍がさらなる攻撃を仕掛けてくることは目に見えている。はたしてホワイトベースの運命は!?
この回も非常に内容の濃い回であった。手に汗握る展開の連続で、しかもその中に登場人物の心情や過去にまつわる表現がちりばめられている。緻密なストーリーテリングである。
記事を書く自分もつい力が入ってしまった。まさか6000字になろうとは。このペースで書くとすれば「機動戦士ガンダム」の感想を書き終えるまでに1年くらいかかってしまいそうだ。
アムロがガンダムに乗り込んだ理由とは?作りこまれた世界観と緻密なストーリー展開!~機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!!」感想
冒頭ナレーション
冒頭ナレーションによる状況説明から物語は始まる。
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして、死んでいった。宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この1ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、8ヶ月あまりが過ぎた。」
人口爆発のため宇宙に移民宇宙への移民の理由が人口爆発にあるというところにこの作品の時代性が見て取れる。
ローマクラブが「成長の限界」を発表して人口爆発の警鐘を鳴らしたのが1972年。「機動戦士ガンダム」が放送されていた1979年当時は、人口爆発が切実な問題として人々に意識されていた時代である。
現代でも人口爆発は世界規模で見れば喫緊の課題であることには間違いない。しかし、われわれ日本人にとってもっと切実なのは少子高齢化、および、人口減少である。そうした意味で、人口爆発と言われても現代を生きる我々にはあまりピンとこないかもしれない。
コロニーを地球へ落とす!
スペースコロニーを地球に落とすシーン。これで総人口の半分が死亡したというのであるから、人類史上最悪の非情かつ残虐な作戦である。
ジオン軍がここまでの未曽有の被害を生じる作戦を実行した理由は何か?
戦争はただ相手を痛めつければよいというものではない。敵国を全滅させてもその後の復興が大変になるだけだ。必要最小限度の戦闘で最大の成果を得ることが肝要である。
このあたりは今後描かれていくのであろう。
スペースコロニー
描かれているスペースコロニーはシリンダー型のものである。
シリンダーは直径4マイル (6.4 km)、長さ20マイル (32 km) で数百万人の人口を想定している。0.55rpmで回転(1分50秒で1回転)し、地球と同等の重力を発生させる。円筒内部は円周方向に6つの区画に分かれており、交互に陸と窓の区画となっている。窓の外側には太陽光を反射する可動式の鏡が設置され、昼夜や季節の変化を作り出す。
スペースコロニー - Wikipedia
コロニーの直径は6.4km。前半、コロニーに侵入したザクが降下するシーンがあるが、この時ザクは2〜3キロメートル落下していたということになる。わかりにくいが。
なお、映画「インターステラー」に登場するコロニーもこのシリンダー型である。
アムロとフラウボウ
フラウボウはアムロの家に勝手に上がり込み自由に動き回る。クローゼットを開けて避難の準備もテキパキこなしていく。
他方、アムロは下着姿のまま自分の作業を行っている。好きなことに対してはすべてに優先して没入するタイプなのだろう。この後、砲撃飛び交う戦場でアムロがガンダムの資料を夢中で読みふけるシーンがあるが、同じ意図の演出である。
お節介焼きのフラウボウとマイペースなアムロという両者の関係がここから見て取れる。
おそらくテーブル上のサンドイッチを用意したのもフラウボウなのだろう。で、それを食べずに放置するアムロ。こいつ最悪である。
少年ゲリラ
アムロの父親とブライトとの会話で少年ゲリラの話しが出てくる。
父親「こんな歳の子がゲリラ戦に出ているとのうわさも聞くが本当かね?」
ブライト「はい、事実だそうであります」
父親 「嫌だねえ」
戦争が始まってすでに9か月ほど。地球にコロニーを落とされ、人口も激減した地球連邦軍。少年ゲリラまで戦場に駆り出される状況である。
ゲリラ戦は劣勢な側が用いることの多い戦術であり、連邦軍の旗色が悪く、戦力の相当数を失っていることを物語っている。ここまでの戦闘で連邦軍がかなり窮地に追いやられていることが伺える。
コロニー内で戦闘に!
デニムとジーンが運搬されていく連邦軍のモビルスーツを偵察するシーン。
ジーン「シャア少佐だって戦場の戦いで勝って出世したんだ」
デニム「おいジーン、きさま命令違反を犯すのか?やめろジーン」
ジーン「ふん、手柄を立てちまえばこっちのもんよ」
功を焦ったジーンの奇襲によって一気に戦闘状態に。といってもほとんどジオン側の一方的な攻勢である。
第1話からこれでもかというくらいたくさんの爆発シーン。よく見ると爆風でふっとぶ人影がはっきりと描かれている。
地面に倒れるたくさんの人々。血飛沫こそ描かれていないが、この物語が描くのは戦争であり人の死であるということがはっきりと示されている。
アムロと父親の関係
父親「避難民よりガンダムが先だ。ホワイトベースに上げて戦闘準備させるんだ」
アムロ「父さん」
父親「ん、アムロ避難しないのか?」
アムロ「父さん、人間よりモビルスーツの方が大切なんですか?」
父親「早く出せ」
アムロ「父さん」
父親「早くホワイトベースへ逃げ込むんだ」
アムロの父親はガンダムのことしか考えてない。アムロの問いも意図的に答えないようにしている。アムロへも「早く逃げろ」というだけで戦場で右往左往する息子に対する気遣いは微塵も感じられない。
前半のアムロとフラウボウとの会話でも
フラウボウ「入港する軍艦にアムロのお父さん乗ってるんでしょ?」
アムロ「だと思うよ。一週間前に地球に降りるって言ってたから」
フラウボウ「ここも戦場になるの?」
アムロ「知らないよ、親父は何も教えてくれないもん」
と親子の会話はほとんどないようだ。
父親が軍人で極秘任務を遂行している立場とはいえ、かなり淡白な親子関係である。
なぜアムロはガンダムに乗り込んだのか。
「ロボットアニメのお約束だから」という説明では私は納得しない。天才・富野由悠季もそんな理由で満足するような人物ではないはずだ。
アムロは「人間よりモビルスーツの方が大切なんですか?」と父に問う。この問を発するの直前、アムロの目の前で連邦兵が爆死し、フラウボウの母親も祖父も死んでしまった。泣き叫ぶフラウボウに対し気丈に振舞うアムロだが、アムロも心中は恐怖や絶望が渦巻いているはずだ。もうこんな思いはしたくない。アムロの答えは「人間の方が大事だ」に決まっている。
一方、アムロの父親は「避難民よりガンダムが先だ」といってガンダムの搬送を急がせる。
このセリフからは、血も涙もない冷徹な人物を想像するかもしれない。
しかし、父親がガンダムを優先させるのはガンダムをホワイトベースにあげて戦闘準備をさせるためであり、それはつまるところ人を守るためである。決して人の命をないがしろにしていわけではない。ここはアムロと変わらない。
もっとも、軍人である父親はあくまで軍事行動としてガンダムを運用しようとしていた。ただ、そうするとガンダムをホワイトベースにあげ正規のパイロットが搭乗し出撃するまでには時間を要してしまう。その間にもっと多くの民間人の命が失われてしまうだろう。
多くの命が一瞬で失われる光景を目の当たりにしたアムロにはそんな悠長なことは言ってられない。悲しみ、怒り、恐怖などなど様々な感情がないまぜになったまま、アムロは人を守るために即座にガンダムに乗り込んだのだ。
そこには人よりもモビルスーツを優先させる(ように見える)父親への反発という子供じみた理由もあったことは想像に難くない。
父親の考えも十分理解できる。むしろ中期的、長期的にみればそちらの方が正しい。しかし、子供にはそんな理屈は通用しない。子供にとって大事なのは「今、ここ」なのである。
ここで描かれるのは「大人の論理」と「子供の感情」のすれ違いである。
結局この親子のすれ違いは解消されないまま父親は宇宙へと消えていった。
ガンダム大地に立つ!?
アムロ「こいつ、動くぞ」
これ、アムロのセリフだったのか...。初めて知った。
タイトルは「大地に立つ」となっているが、立っているのはコロニーの内側なので「大地」と言ってしまうと多少違和感がある。まぁいいか。
動き出したガンダムを見てジーンとデニムが驚いている。ここでモビルスーツ同士の戦闘になるとは予想していなかったようだ。
ライフルを撃ってもビクともしないガンダム。装甲の厚さにジオン兵がビビる。
装甲が厚いだけではない。ザクの口元(?)を鷲掴みにしてぶっ壊す怪力のガンダム。
ビームサーベルでザクを一突きして撃退。
何の訓練も受けていないド素人のパイロットが、説明書を読みながら敵のモビルスーツ2体をあっという間に撃退してしまった。
圧倒的な性能差を見せつけるガンダム。ここでガンダムを破壊できていれば歴史は違っていたかもしれない。
「若さゆえの過ち」とは何だったのか?
シャア「認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを」
シャアの「若さゆえの過ち」とはなんだろう。
ジーンが「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」「手柄を立てちまえばこっちのもんよ」と奇襲を掛け、戦闘状態に陥ってしまった。
その結果ジオン軍はザク2体を失う結果となっている。
こうした部下の行動を予測できなかったことを言っているのだろうか。よくわからなかった。
第1話の感想
ホワイトベースが連邦軍のモビルスーツを受領するために地球からサイド7へ入港。
しかしシャア率いるジオン軍の戦艦に追跡され、さらに連邦軍が密かにモビルスーツを開発していたことも知られてしまう。
ここで偵察目的でサイド7内に侵入したシャアの部下が功を焦って奇襲を仕掛け戦闘状態に。
偶然居合わせただけの民間人アムロがガンダムに乗り込み、ザク2体を撃破。
ガンダムとジオンとの戦いが始まった!!
正味20分程度の本編で、冒頭ナレーションや登場人物の会話・行動により状況説明を無駄なく行っており、非常に作り込まれたストーリーである。
ジオンが戦争を始めた理由やこれまでの戦況、より細かな設定などは今後あきらかになっていくのだろう。
何気ないセリフからこれまでの戦況や細かい設定をうかがい知ることができる。深読みがはかどる作品である。
序文
このブログは、ガンダム初見の「ごまさば将軍」が、ガンダムシリーズを「機動戦士ガンダム」から1話ずつ観賞して、感想を書くブログです。
とりあえず公開順に観賞していく予定で、最終目標は2021年6月11日に公開された「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」に追いつくことです。
「追いつくことです。」といってはいますが、この作品に至るまでにどれほど時間がかかってしまうのか事前調査などは全くしておりませんので、途方もないことを目標にしている可能性もありますが気にしません。
なお、ごまさば将軍のガンダム知識は子供の頃にファミコンソフト「SDガンダム ガチャポン戦士3 英雄戦記」を意味もわからずプレイしてたことがある程度。ほぼゼロです。
これからガンダムシリーズを観てみようという方はぜひ一緒に楽しんでいきましょう。