ガンダムシリーズ全部観るブログ

ガンダムシリーズを見たことない「ごまさば将軍」が1話ずつ観賞して感想を書きます。

何のために戦うのか?アムロ「僕はもうやめますよ!」~機動戦士ガンダム 第7話「コアファイター脱出せよ」感想

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コアファイター脱出せよ

老人・女性・子供・傷病者ばかりの避難民

この回は避難民の状況から始まる。避難民は総勢100人以上。しかし、映像で確認する限り老人、女性、子供ばかりである。包帯を巻いている人やベッドで横になる人も見える。傷病者も多数存在することがうかがえる。

おそらく戦える男性はすべてホワイトベースの操縦・運用に駆り出されていて、残っているのは老人、女性、子供・傷病者ばかりなのだろう。

何気ない描写だが、ホワイトベースの人手不足・窮状を表現している。

衛星軌道に乗れないホワイトベース

マーカー「無理ですね、衛星軌道には到底乗れません」

前回第6話からジオン勢力圏内で孤立無援のホワイトベース

もう一度宇宙に出ることができれば、ルナツーへ戻り体勢を立て直すこともできる。

しかし、度重なるジオン軍の襲撃によりエンジンが故障、出力が低下し衛星軌道に乗れないことが判明した。宇宙へ避難するためにはホワイトベースを衛星軌道に乗せる必要がある。そのためには第一宇宙速度を超える速度にまで加速しなければならないが、エンジンの故障のためそれができない。

というわけで、ホワイトベースは地球上でなんとかジオン軍の襲撃をしのぎ続けるしかない。

クルーの数も圧倒的に足りておらず、そのクルーも素人ばかり、補給も受けることができない。ホワイトベースはいつ撃沈してもおかしくない危機的状況にある。

民間人を降ろす?

ブライト「そんな。我々は軍人です。民間人を守る義務があります」
リード「だからこそだよ。100人以上いる避難民をホワイトベースから降ろせばだな、我々は衛星軌道に戻って体勢を」
ブライト「ここはジオンが占領している所なんですよ。子供や老人達を」

民間人を降ろすかどうかでもめるブライトとリード。

ホワイトベースガンダム連邦軍参謀本部に送り届けるという目的を達成するには民間人は足手まといでしかない。補給も期待できないし、食糧問題も発生する可能性がある。

民間人を降ろしてしまうのも1つの作戦としてはありうる。

しかし、民間人を降ろすといってもどこに降ろすのだろうか。周囲に生活できそうな町らしきものは何もない。ガルマの基地周辺の映像を見ても壊れた建物が点々と存在するばかりで、使えそうな建物はガルマ部隊の本部建物くらいしか見当たらない。そうした荒涼とした土地に民間人を降ろして民間人たちはどうなるのか。

ホワイトベースの現状を考えると民間人を降ろすという作戦は現実的ではないかもしれない。

アムロの作戦

ブライト「ホワイトベースのエネルギーを利用してコアファイターを発進させる?」
アムロ「はい。弾道軌道に乗れば目的地には確実に着けます」
ミライ「確かに可能性は十分ね。さっき計算してみたんでしょ?」
アムロ「はい。中央カタパルトにメインエンジンのスチームバルブを繋げさえすれば、やれます」

ジオン勢力圏内で完全に孤立状態にあるホワイトベースだが、連邦軍参謀本部と連絡が取れれば援護や補給を期待でき、危機的状況を脱することができる。

アムロの作戦は、ホワイトベースのカタパルトを使ってコアファイターを弾道軌道でばひゅーんと発射し、ジオン軍の頭を飛び越えて連邦軍参謀本部へ向かおうというものである。

2日間の追撃!?

ガルマ「驚いたな。外から見たデータで割り出した性能でも、我がモビルスーツ・ザクなど問題外か。内部のデータがわかればさらに。シャア、あのモビルスーツを敵によくも2日間も追撃できたものだな」

ガルマのセリフから驚くべき事実が判明した。なんとサイド7での奇襲からここまでわずか2日間ほどの出来事だったのである。

この間の出来事を軽くまとめてみよう。

  1. サイド7内にザク2機が潜入、奇襲を仕掛ける。アムロガンダムでザク2機撃破。
  2. ホワイトベースルナツーに向けてサイド7出港。シャアとアムロ、初の直接対決。
  3. ルナツー到着直前に、補給中のムサイを急襲。
  4. ホワイトベースルナツーに到着。ブライトたちは隔離、ガンダムは封印されてしまう。
  5. シャアがルナツーを攻撃。ホワイトベースガンダムで撃破。
  6. ホワイトベースが地球に向けてルナツーを出港。
  7. 大気圏突入のタイミングでシャアがホワイトベースを襲撃。
  8. ホワイトベースガンダム地球に降下成功
  9. ガルマ部隊がホワイトベースを襲撃。
  10. ガルマ、次の作戦検討中。←今ここ。

「追撃」と言っているので、サイド7出港時から大気圏突入時までが2日間だと考えるとしてもとてつもない密度である。アムロは最前線でシャアと戦いっぱなしの2日間だったわけだ。そりゃ疲れ果てるわけだ。

合計55時間!?

連邦兵「コアファイターには何時間ぐらい乗ったのかね?」
アムロ「え、あ、シミュレーションで18時間、訓練で35時間、実戦で2時間です」
連邦兵「いまどきそんなもんで実戦か。ま、仕方ない、度胸決めてやるんだな」
アムロ「はい」

アムロコアファイターに乗った時間は「シミュレーションで18時間、訓練で35時間、実戦で2時間」の合計55時間である。

ガンダムのコックピットはコアファイターなので、ガンダムに乗っている時間もここに含まれるという理解でいいのだろうか。

それとも、戦闘機の形をしているコアファイターに乗っている時間が合計55時間で、これとは別にガンダムに乗っている時間がある、ということだろうか。

後者だとすればガルマの「2日間」というセリフとの整合性が怪しくなってくるので、おそらくは前者の理解でいいのだろう。

それにしても、アムロは睡眠と食事以外はほぼほぼガンダムコアファイターのシミュレーション・訓練を行っているのだろう。そうでなければたった数日で搭乗時間が55時間に達することはない。

アムロの過労具合が窺える。

「もう食べない方がいい」

コアファイターをカタパルトで射出する場合、パイロットには強いGがかかる。そうすると脳内の血流量が減少し、めまいが発生したり嘔吐したりすることがある。立ちくらみと同じ原理だ。

アムロがサンドイッチのようなもの食べているが、食べ過ぎるとコアファイターのコックピットがとてもとても悲惨なことになるので負傷した連邦兵「もう食べない方がいい」と促している。

そして、もっと強いGがかかった場合、視野の狭窄や喪失をきたし最後は意識喪失に至る。

人体に強い+Gがかかると、心臓より上にある脳へは充分な血液が供給されなくなりグレイアウト、ブラックアウト、などの症状が現れる。さらに強いGがかかると一過性脳虚血による意識喪失(G-LOC=失神)を起こす。戦闘機では旋回時にパイロットが力むことで血圧低下を防止しており、効果を上げるために筋力トレーニングをする。【G-LOC

今回の作戦でアムロは実際に意識喪失にまで至っているので、相当強度のGがかかったことが分かる。このあたりの描写は非常にリアルだ。

アムロの成長(その1)

ハヤト「心配じゃないのか?」
アムロ「何が?」
ハヤト「君の一番仲良しのフラウ・ボゥが人質にとられているんだぞ、少しは気になって」
アムロ「ハヤト、ブライトさんもミライさんもセイラさんもリュウさんもいるんだ。ホワイトベースのことは任せられると思ってるよ。僕は自分のできる事をやるだけだ」

フラウボウが人質になったことについて、アムロも気にはなっているようで、ハヤトの方をチラチラ見てはいる。

しかし、声をかけようとはせず連邦兵との会話を優先させている。

ハヤトから「心配じゃないのか?」と言われるが、「ブライトさん達がいる。」、「自分のできることをやるだけ」と返す。

このセリフはこれまでのアムロなら考えられないセリフだ。

前回第6話で、アムロはハヤトの「ガンタンクで注意を引いて敵の目標を分散させる」という言葉に耳を貸そうとせず、自分の作戦に拘泥していた。自分一人でなんとかしようと考えていたが最後の最後でハヤトの言葉を受け入れている。仲間を信じて協力することができなかったアムロのささやかな成長だ。

その流れで考えれば、このシーンはホワイトベースの他のクルーにフラウボウのことは任せよう、仲間を信じようと考えることができるようになってきた「成長したアムロ」を描いているといえるだろう。

辣腕のシャア

ガルマ「シャア、どう思う?衛星軌道にでも脱出するつもりかな?」
シャア「そんな速度じゃないな。あ、あるいは!ドレンを呼び出してくれ、コムサイの発射準備をさせる」
ガルマ「シャア、どういうことだ?」
シャア「木馬め、連邦軍から孤立している状態をなんとかしたがっているんだ」

・・・
ジオン兵「木馬から何か発射されました」
シャア「弾道軌道か?」
ジオン兵「は」
シャア「我が軍を飛び越えて連邦軍本部と連絡をつけるつもりだ」

・・・
ガルマ「基地上空はミノフスキー粒子のおかげでレーダーは使えないぞ、どうするシャア?」
シャア「追いかけるまで!接触できるか?」
ジオン兵「1分後に発進、2分50秒でキャッチできます」
シャア「よし」
ガルマ「シャア。フフフ、相変わらずだな。よし、ガウ攻撃空母に伝えろ、シャアを援護しろとな」

ガルマは「どう思う?」「どういうことだ?」「どうするシャア?」とシャアに聞いてばかりで状況を把握できていないし決断もできていない。

これに対し、シャアはホワイトベースのわずかな変化からその作戦行動を察知し、即座に出撃している。状況判断と分析、行動開始のスピードはさすがだ。できる男感が存分に伝わってくる描写である。

前回のガルマはガウ攻撃空母で陣頭指揮を執り、空と陸からホワイトベースを追い詰めていった。しかし、今回は完全にシャアの当て馬になってしまっている。

やはりガルマはただのおぼっちゃんか?

ブライト達と民間人の違い

ブライト「私は地球に着陸しないとは言っていない」
避難民「あとどれくらいで着陸できるのか、はっきりとこの耳で聞かせてもらいたい」
避難民「あんたらに任せきりで悪いが、戦争の間あんた達と対等に話をする為にこの子達をここに置く事に決めたんじゃ」
ブライト「私達も全力を尽くしているんです」

避難民たちは二度と戻れないと思っていた地球に帰ってきた。しかし、いつまでも戦闘が続き、着陸する様子もない。一体どういう状況なのか。先の見えない状況にストレスを感じている。

人間つらい状況にあっても、いつか終わると信じることができればそれなり我慢が利くものである。

民間人のいう「あとどれくらいで着陸できるのか、はっきりとこの耳で聞かせてもらいたい」という要求は、「この状況がいつまで続くのかわからずストレスだ」、「その苦痛を取り除いてほしい」、「明確な目標を設定してほしい」、「そうすれば我慢できる」という要求である。

他方「この状況がいつまで続くのかはっきりしてくれ」といわれてもブライト達からすれば「こっちが聞きたいわ!!」と言いたいところだろう。

シャアの策略によりジオン軍勢力圏内に降下してしまい危機的状況にある。これを打開しなければV作戦自体が失敗に終わってしまう。自分たちの命も危ないし、当然避難民も無事ではすまない。

ホワイトベースガンダム連邦軍参謀本部まで送り届けることがブライト達の任務であるが、ホワイトベースに避難民が搭乗している以上その命を守ることも当然任務に含まれている。

ブライト達は命をかけてジオン軍とたたかい、民間人を保護しようとしているのだ。

にもかかわらず「なんで戦争ばっかりしてるんだ」、「さっさと着陸しろ」などと言われた日にはぶち切れ必至である。

避難民達もそのことは頭では理解しているはずである。しかし、実際に戦闘行為に参加しているわけではない避難民たちに戦争という実感は伴っていないだろう。

民間人とブライト達のこの温度差が今回の「暴動」につながっている。

ただブライトが偉いのは決して民間人を見捨てようとはしていないところである。当初は避難民に向けていた銃も収め、説得を試みようとしている。

意識喪失から回復するも・・・

セイラ「アムロアムロ、応答して、アムロ
アムロ「ぼ、僕は」
セイラ「気がついて?アムロ
アムロ「セイラさん・・・」
セイラ「近くに敵の追撃機がいるはずよ」
アムロ「ああっ」
セイラ「落ち着いて、落ち着いて」

強烈なGのために意識を失うアムロ。その間にシャアのコムサイが接近する。ホワイトベースからの援護のミサイルも発射されるがシャアに完全に見切られてしまっている。

その後、ようやく意識喪失から回復したアムロだが、脳血流が減少し判断能力が低下しているところに銃撃を受けパニック状態となっている。このあたりの描写は非常に細かくかつリアルである。

グレイアウトは即時の失神等には繋がりにくいため、ブラックアウトほど危険性の高い状態ではないが、脳内血流の偏移はヒューマンエラーを起こしやすい状態を作り出すものであり、その意味では少なくともレッドアウトよりは危険である。【グレイアウト

操縦桿ガチャガチャで助かった

シャア「ドレン、このバルカン砲は照準が甘いぞ」

この時アムロは撃ち落されていても不思議ではなかった。パイロットはあのシャアだし、アムロはパニック状態でまともな反撃もできていないし。

パニック状態のアムロは操縦桿をガチャガチャ動かし、左右にフラフラ。

ところが、このガチャガチャが僥倖だった。コムサイの整備不良か、バルカン砲の照準が合わずコアファイターに砲撃が当たらない。

ご都合主義的にもみえなくはないが、演出は丁寧だ。

アムロの成長(その2)

ブライト「アムロ、断じて撃ち落されてはならん。いいか、相手をよく見るんだ」
アムロ「・・・よく見ろ。(そ、そうだ、相手はたかが大気圏突入カプセルだ。戦闘機じゃないんだ・・・)」

前回と異なり、今回のアムロは仲間の声に素直に耳を傾けてる。その直後、コムサイに直撃弾を命中させている。アムロの成長が垣間見れるシーンだ。

作戦失敗

しかし、依然ピンチのコアファイター。そこにドップの編隊がやってきた。コアファイターホワイトベースの間に入り込んでいるのでホワイトベースからのミサイルによる援護もできない。

ブライト「アムロホワイトベースに戻させろ。全員、対空攻撃用意」
セイラ「アムロ、引き返せて?冷静にね。地上すれすれに戻っていらっしゃい」
アムロ「しかし・・・」
セイラ「ブライトとリード艦長の命令です」

ここで、作戦の続行を諦め、コアファイターホワイトベースに戻すことに。

殴られるカイ(2回目)

カイ「へへへへ、無理すっからさ」
ブライト「きさま!!」(デュクシ
カイ「あうっ。な、なんだよ!俺が何したってんだよ?」
ブライト「きさま、今度同じような態度を取ったら宇宙だろうとなんだろうと放り出す!!」

今回はブリッジにいるカイが全方位にちょっかいを出し、とにかく顰蹙を買う回である。

セイラ(第2話)に続いてブライトにも殴られるカイ。これはブライトが正しい。こういう冷笑的な人間がいると現場の士気が著しく下がってしまう。

第6話の冒頭でもシミュレーション訓練中のハヤトをからかっていた。

カイ「おやおやハヤト君、ご精が出ますねぇ。しかしね、目の前に敵さんがいるのよ、間に合うの?」
ハヤト「茶化さないでください」(第6話)

カイのこうした言動があるためにかえってホワイトベース内の団結や連帯、仲間意識を強く印象付けている。

卵が先か鶏が先かという話になってしまいそうだが、こうしたホワイトベース内の仲間意識・協力関係ができつつあることに対してカイは不安を覚えているのかもしれない。

もともとカイはつまはじき者だ。最初の頃は寄せ集めのメンバーしかいないホワイトベースに居心地のよさを感じていたのだろうが、徐々に仲間意識が醸成されるにつれて居場所がなくなってしまうと感じている。

その焦りや反発から冷笑的な態度に出てしまうのだろう。ようはカイもまだガキで未熟ということだ。

アムロvsシャア(5戦目)

アムロ「地上に落ちるまでは1分20秒。それまでに仕留められるか。」

ホワイトベースに収容されたコアファイターはそのままガンダムに換装。シャアもザクで出撃する。1分20秒の空中戦が始まった。

ここまでガンダムはコロニー内、宇宙空間、大気圏突入時、地上と様々な場所で戦闘を行ってきた。今度は空中戦(自由落下中)である。

アムロ「ビームを使いすぎた」
セイラ「駄目よ、アムロ、退却しなさい。銃弾を一ヶ所に受ければ装甲が破壊されないとも限らないわ」
アムロ「そ、そんな」
ブライト「ミサイルで援護する、逃げ帰れ」

いつものようにビームライフルのエネルギーを早々に使い果たしてしまったアムロ。このあたりの戦い方はまだまだ未熟だ。

反撃できない状態のガンダムに対し、シャアは頭部へ銃撃を集中させる。ガンダムの装甲がいくら厚いとはいえ、このままでは破壊されてしまう。

すかさずホワイトベースの援護のミサイルを発射。これがなければシャアの攻撃で装甲を破壊されていたかもしれない。

無事ホワイトベースに着艦したガンダム。今回もジオン軍の襲撃を乗り切った。

しかし、コアファイタージオン軍の頭の上を飛び越える作戦は失敗に終わった。

何のために戦うのか

避難民「あんたさんが、いや、ここにいる皆さんも全力で戦っておる。そのつらさはわかっとるつもりじゃが、しかし、わしら年寄りの愚痴で言ってるんじゃないんだ。我ら地球の大地を」
アムロ「わかってます」
避難民「わしらをここで降ろしてくれ」
ブライト「あと一息で連邦軍の勢力圏に入るんです。それまでの我慢がなぜできないんですか?」
避難民「それまでの命の保証を誰がしてくれるんです?」
避難民「この子の命だけでも助けてください」
避難民「安全な所を見つけて我々を降ろせばすむんじゃないのかい」
アムロ「あなた方は自分のことしか考えられないんですか?」
避難民「子供に年寄りの気持ちがわかるか!?」
アムロ「誰が、自分だけの為に戦うもんか。皆さんがいると思えばこそ戦ってるんじゃないか。僕はもうやめますよ?」
ミライ「アムロ、お茶が入ったわよ。フラウボウとちびちゃん達をブリッジによこしてください」
避難民「期待しとりますよ、お嬢さん」

避難民たちは「地球の大地を踏みたい」「安全な場所で降ろしてほしい」と口々にいう。しかし、ここはジオンの勢力圏内である。ジオンの攻撃を凌ぐのに精一杯でそんなことをしている余裕はない。アムロが「自分のことしか考えられないのか」と語気を強めるのも当然だ。

アムロは何のために戦っているのか。自分の命を守るためということは当然あるだろうし、ホワイトベースを守ることも目的に入るだろう。同じように避難民たちの命を守ることも含まれる。

しかし、アムロが守ろうとしている当の本人たちは自分勝手で我がままでホワイトベース全体のことを考えている様子はない。このままこの船に乗っていれば命の保証はないとまで考えている。アムロたちを完全に信頼しているわけではない。

自分が守ろうとしている人たちは必ずしも自分を信頼し応援してくれているわけではないのだ。

だから自分はもう戦いたくない、もう戦わないと考えるのは自分本位な判断であり、この避難民たちと同じである。

軍隊には民間人を保護する義務がある。たとえそれば自分たちに対して批判を浴びせる人たちであっても同様である。現実とはかくも厳しく、非情で、甘ったれを許さないものなのだ。

しかし、アムロにはそれが理解できない。だから「僕はもうやめますよ」と口にしてしまった。これは避難民を見捨てる発言である。

前半パートのブライトが避難民に苛立ちつつも見捨てようとしなかったのとは対照的に、アムロはストレートに感情を口にしてしまった。まだまだアムロは未熟なのだ。

これ以上アムロが発言してしまうと避難民との関係が修復不可能なレベルに達してしまう。その直前にミライが絶妙なタイミングで話を遮る。やはりミライは切れる女だ。

第7話の感想

前回、ホワイトベース内はぎすぎすした雰囲気だったが、今回は一つの作戦に向けて連帯感が醸成されつつある印象を受けた。

他方、地球に降下できたにもかかわらず、なかなか大地を踏むことができない避難民たちの我慢も限界に来つつある。その避難民たちの態度にアムロも苛立ちを隠せない。

コアファイターによる頭上飛び越え作戦は、本編で説明されていた事柄をちびっ子たちが理解できたかはかなり怪しいが、それでもこの作戦ならホワイトベースは危機的状況を脱することができるかもしれないと思えるリアリティあふれる描き方であった。

人間ドラマの部分も戦闘作戦部分も濃厚で大人でも十分楽しめる回である。